塩酸
読み:えんさん
外語:hydrochloric acid
強酸性
を示す
無機酸
の一つ。塩化水素の
水溶液
。
胃液
の
胃酸
の主成分である。
目次
概要
基本情報
誘導体、関連物質の例
性質
溶解性
製法
特徴
用途
危険物質
食品添加物
缶詰
実験室的な利用範囲
安全性
適用法令
危険性
有害性
環境影響
概要
基本情報
化学式: HCl (「HCl in H
2
O」や「HClaq」(aqは添え字でaquaの略)とも書かれる)
分子量
: 36.46(塩化水素)
密度
: 1.18g/ml(20%の場合)(MSDS)
融点
: -50℃(MSDS)
沸点
: 約108℃(20%の場合)(MSDS)
CAS番号
: 7647-01-0
ICSC番号: 0163(塩化水素)
官報公示整理番号(化審法番号): 1-215
外観:
無色透明
で強い刺激臭がある
溶解性:
水
: 自由に混合
誘導体、関連物質の例
塩化水素
ビタミン
ビタミンB6
塩酸ピリドキサール
塩酸ピリドキシン
二塩酸ピリドキサミン一水和物
医薬品
抗ヒスタミン剤
塩酸ジフェンヒドラミン
抗生物質
セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物
塩酸バンコマイシン
抗コリン薬
塩酸オキシブチニン
塩酸プロピベリン
鎮咳剤、去痰剤
塩酸ブロムヘキシン
塩酸ホミノベン
塩酸メチルエフェドリン
塩酸エフェドリン
塩酸フェニルプロパノールアミン
血管収縮剤
塩酸テトラヒドロゾリン
ナファゾリン塩酸塩
抗鬱薬
三環系抗鬱薬
塩酸アミトリプチリン
塩酸イミプラミン
四環系抗鬱薬
塩酸マプロチリン
塩酸ミアンセリン
トリアゾロピリジン系抗鬱薬
塩酸トラゾドン
フェニルピペラジン系抗鬱薬
塩酸ネファゾドン
SSRI
パロキセチン塩酸塩
SNRI
ミルナシプラン塩酸塩
メジャートランキライザー
塩酸クロルプロマジン
塩酸チアプリド
塩酸チオリダジン
覚醒剤
塩酸ジアセチルモルヒネ (
ヘロイン
)
塩酸メチルフェニデート
性質
溶解性
塩酸は
還元性
の
酸
なので、
イオン化傾向
でH(
水素
)よりイオン化しにくい
物質
を溶かせない。
酸化性の強い濃硝酸と
濃塩酸
を1:3で混合した液体は
王水
と呼ばれ、
イオン化傾向
が低い金や白金も溶かす。
製法
工業的には
食塩水
の電気分解で得られた水素と
塩素
を直接化合させて作られ(H
2
+ Cl
2
→ 2HCl↑)、得られた気体を
水
に溶かす。
実験室では
食塩
を希硫酸に溶かして加熱し、得られた気体を水に溶かす。NaCl + H
2
SO
4
→ NaHSO
4
+ HCl↑。
特徴
用途
工業的には金属の精製から
医薬品
の製造まで、極めて多目的に利用される。
また、実験器具の洗浄など、様々な目的で利用される。
危険物質
目
に入ればめちゃくちゃ痛く、高濃度のものが目に入れば失明する可能性がある。
万一目に入ったときはまず、多量の水で目を洗い、その後速やかに
病院
へ。これは殆どの化学薬品に共通の処理であり、
化学実験をするときの心構え
である。それでも濃硫酸や濃アルカリならまず確実に失明するので、それと比べれば幾らかマシではあるらしい。
吸引すれば気道や肺を冒す。濃度の高い塩酸が
皮膚
につくと
火傷
の症状を呈する。
食品添加物
食品添加物
のうち加工助剤としても指定されている。
加工助剤とは、食品の加工に使って良いが、最終食品には残留してはならない、というものである。その目的で使うなら、食品用のグレードのものを使わなければならない。
缶詰
缶詰用の果物(蜜柑など)の皮むきも塩酸に浸して行なわれる。
蜜柑は、外の皮を剥くと中に実があるが、この実にも皮が付いている。この実の皮を内果皮といい、これを塩酸で溶かしている。
塩酸などの薬品で処理をしているというと多くの人が不快感を露わにするが、案ずることはない。塩酸は胃酸の成分であり、酔っぱらったときにいつも吐いている筈だからである。もっとも、塩酸はあくまで加工助剤なので、最終の食品には残留していない。
具体的な手法としては、蜜柑の外皮は機械で剥き、水中で実を分割した後、0.5%の希塩酸溶液に20分〜40分程度浸けて内果皮を溶かした後、0.3%前後の希水酸化ナトリウム溶液に同じくらいの時間浸けて中和し、最後に水洗いして残留しないようにしている。
この時、酸やアルカリは食品添加物にも使用できる高純度のものを使用し、水洗して残留しないことが食品衛生法において定められている。
実験室的な利用範囲
石灰岩
(石灰石)を入れた
フラスコ
に
希塩酸
を注ぐと
二酸化炭素
が発生。
亜鉛
などの金属を入れたフラスコに希塩酸を注ぐと
水素
が発生。
アルコール
と
カルボン酸
の混合液に希塩酸を入れると触媒として働き、
エステル
生成。
微生物や細胞の培養で使う培地などの
pH
の調整にも良く使われる。
安全性
適用法令
危険物の規制に関する政令
届出を要する物質
毒物及び劇物取締法(法 別表第二)
劇物
麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令
麻薬向精神薬原料
運送上の制限もある。
道路法
道路法施行令第19条の13(車両の通行の制限)
船舶安全法(危険物船舶運送及び貯蔵規則)
腐食性物質
航空法(第194条)
腐食性物質
危険性
引火点: 不燃性である(MSDS)
発火点: (該当資料なし)
爆発限界: (該当資料なし)
有害性
刺激
腐食性: (該当資料なし)
刺激性: 眼、
皮膚
を刺激する
感作性
: (該当資料なし)
毒性
急性毒性
: 飲み込むと有害
ラット 経口
LD50
: 900mg/kg体重(MSDS)
マウス 吸入
LC50
: 1108ppm/1H(MSDS)
ウサギ 経皮 LD50: >5010mg/kg体重(MSDS)
慢性毒性
: (該当資料なし)
がん原性:
陰性
(IARC)
変異原性
: (該当資料なし)
生殖毒性: (該当資料なし)
催畸形性
: (該当資料なし)
神経毒性: (該当資料なし)
規制値
一日許容摂取量
(ADI): (該当資料なし)
暫定耐用一日摂取量(PTDI): (該当資料なし)
急性参照値(ARfD): (該当資料なし)
暴露許容濃度(TLV): 設定されていない
最大許容作業濃度(MAK): (該当資料なし)
環境影響
分解性: (該当資料なし)
蓄積性: (該当資料なし)
魚毒性: 水生生物に対して毒性が非常に強い
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