ベクトル型プロセッサー
読み:ベクトルがた-プロセッサー
ベクトル演算、行列演算を行なうことを前提に設計されたプロセッサーのこと。
概要
パーソナルコンピューターなどのCPUとして使われているものは、これに対するスカラー型プロセッサーである。
ベクトル型プロセッサーは、その仕組み上、同じような計算を大量に行なう科学技術計算を特に得意とする。たとえば3行3列の行列同士の和・差の演算を例に取るとスカラー型プロセッサーでは必ず9演算命令(メモリーからのデータの取得格納を含めると実際の命令数は更に多い)であるのに対し、ベクトル型では前処理をしておけば1命令で処理可能にもなる。これは大きな行列の積の計算になるとより顕著に差が現われる。
ベクトル型プロセッサーは、このような膨大な量の演算を効率的に行なうために作られており、スーパーコンピューター向きのプロセッサーである。
特徴
動作
まず、メインメモリー上にベクトル、行列などのデータを展開しておく。
次にプロセッサーにそのデータをどのように処理するか(例:和・差を求める、内積を求める、外積を求めるなど)について指示を与える。
そうした上で、プロセッサーにデータ処理の指示を与えると、メインメモリー上に展開されたデータを大量に演算する。
この演算を効率よく行なうために、非常に大きなメモリー帯域幅と多数のベクトルレジスターを用意していることを特徴とする。
対スカラー
近年ではスカラー型プロセッサーの並列処理技術が上がったため、スカラー型でも高価なベクトル型プロセッサー並の処理能力が出せるという意見もある。ただし、ベクトル型スーパーコンピューターの雄であるNECは、科学技術計算ではベクトル型プロセッサーの方が優位であるという姿勢を崩していない。
実際にはベクトル型プロセッサーとスカラー型プロセッサーでは得意とする分野がはっきりと分かれているため、どちらがより優位であるとかいう議論は、あまり参考にならないようだ。
対GPGPU
近年、高価なベクトル型プロセッサーの代わりに、並列演算に長けた画像処理プロセッサーGPUを汎用化したGPGPUを使う動きがある。
パーソナルコンピューター向けに開発されたものとは言え、GPUの機構は明らかにベクトル型コンピューターそのものであり、膨大な量の演算という分野においては、安価で高性能が実現できる計算機である。実際に、東京工業大学のスーパーコンピューターTSUBAMEは、NVIDIAのGPUを使い、GPUスパコンとして世界で初めて、TOP500の上位にランクインした。
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