集約可能グローバルユニキャストアドレス
読み:しゅうやくかのう-グローバル-ユニキャスト-アドレス
外語:Aggregatable Global Unicast Address

 IPv6アドレスの一つで、インターネット上で用いられるIPv6ユニキャストアドレスのこと。
目次

概要
 特定のネットワーク機器に割り当てられるアドレスは、「集約可能グローバルユニキャストアドレス」と呼ばれている。
 128ビットのうち、前半の64ビットがネットワークのトポロジーを表わし、後半64ビットでインターフェイスを表わすのが特徴。
 後半64ビットはインターフェイスIDと呼ばれ、EUI-64と呼ばれるフォーマットで表わす。

特徴

範囲
 RFC 3587により、次の範囲が定義されている。
 具体的には、次の範囲である。
 約42澗個分の領域があり、IPv6全アドレス空間のうち、1/8を占めるアドレス空間である。

構造
 2003(平成15)年8月に発行されたRFC 3587で、先のRFC 2374は破棄されて新たな割り当てポリシーが決定した。これが現行のルールとなっている。
 プリフィックスは2進数で001であり、従ってこのアドレスは2000::/3となる。

グローバルルーティングプリフィックス
 アドレス上位45ビットで構成されるこの領域である。現在、IANAは2001::/16をグローバルユニキャストアドレスとして割り振っている。
 この領域は単独で使うのではなく、レジストリの階層ごとに割り振りが決められている。
 ここまでの/48を、グローバルルーティングプリフィックスと呼ぶ。
 ここから16ビットをサブネットプリフィックス(サブネットID)とし、残る64ビットがインターフェイス識別子になる。
 つまりIPv6で接続する場合、ISPにIPv6接続を申し込むと/48で割り当てを受けられる。/64を一つのサブネットとするなら、16ビットつまり65536個ぶんのサブネットに相当するアドレスを自由に利用できることになる。

枯渇の可能性はあるか
 /48のうちプリフィックス3ビットを除くと有効45ビットぶんが一般的なアドレッシングに使われ、ISPから各利用者に配分されることになる。
 ユーザーは128-48=80ビットを自由に利用でき、つまり最大280個=約1.2〓個のノードをNATなしでIPv6ネットワークに接続できることになる。
 常識的に考えてそんな大量のノードを接続するわけがないので、ここまで大盤振る舞いであると本当に不足しないのかどうか不安になる。そこで、実際に計算をしてみることにする。
 有効45ビットの容量は245=約32兆(32,184,372,088,832)である。これを地球の面積で割ってみる。
 陸域のみを平方mに換算すると、1,000,000で割って0.239個/平方mであり、逆にすると1個/4.185平方mとなる。
 さて、陸域だけで考えると、約4平方mの範囲内に最大216個のサブネットを構築し、その中に各最大264個のノードを置くことができることになる。結果として、/48 とはかなり思い切った贅沢な割り振り方に思われるが、/48の中にノードが1個しかないと仮定しても、それでも地球上で使う分には枯渇させることが非常に困難であると判断できる。

特殊な用途

アドレス空間
 このアドレス空間から、幾つかの特殊な用途の空間が割り当てられている。
 下記するアドレスの一覧は次の通り。詳細はそれぞれの項を参照。

IANA IPv6特別目的アドレスブロック
 RFC 6890において、IANA IPv6 Special Purpose Address Blockの確保が情報提供扱いで宣言されている。
 範囲は「2001:0000::/29〜2001:01f8::/29」である。
 後述するような特殊な用途のアドレスは、この範囲に割り当てられる。

Teredoアドレス
 RFC 4380(Teredo:NATを超えられるUDP上のトンネリングIPv6)で、Standards Track(標準化過程)扱いで規定されるアドレス空間である。
 このRFCでは、「2001:0000::/32」とされている。

ORCHIDアドレス
 ORCHIDv2(Overlay Routable Cryptographic Hash Identifiers Version 2)が、RFC 7343提案標準プロトコル(PROPOSED STANDARD)となっている。
 このRFCでは、「2001:20::/28」をORCHIDv2アドレスとしている。
 なお、破棄された古いORCHIDのバージョン1(RFC 4843)は、「2001:10::/28」をORCHIDアドレスとしていた。
 但し、ORCHIDの目的はアプリケーションやAPIのエンドポイントIDとして使われることにあり、IP層における位置を示すことではない。従って、このアドレスはインターネット上に流してはならない。

例示用アドレス
 「例示用」のアドレスも集約可能グローバルユニキャストアドレスから割り当てられている。
 RFC 3849では、「2001:db8::/32」とされている。
 マニュアル等でアドレスを例示する必要がある場合は、このアドレスを使う。このアドレスはインターネット上には決して現われない。

6to4アドレス
 RFC 3056(IPv4 Cloudsを経由したIPv6ドメインの接続)で、Standards Track(標準化過程)扱いで規定されるアドレス空間である。
 このRFCでは、「2002::/16」とされている。

歴史

変遷
 現在のルール(RFC 3587)が決まるまでには、主として次のような歴史を経た。
  1. RFC 2374
  2. RFC 2450
  3. RFC 3587 (現行)

RFC 2374
 まず、RFC 2374において決められたルールである。後にRFC 3587によって破棄されたルールで、ここでは128ビットを、先頭から順に次のように用いることになっていた。
 これは大きく3つの単位に分けられ、次のようになる。
 NICはTLAを割り振り、その下位に属する通信事業者が、NLAを割り振る。こうして、ユーザー組織は先頭の48ビットつりパブリックトポロジーを割り当ててもらうことになる。
 次のサイトトポロジーは、サブネット分割の際に使用する。
 最後のインターフェイス識別子は、MACアドレス(EUI-64)から自動的に決まる。
 こうして、各機器を一意に、かつ自動的にアドレッシングできるのが特徴である。

RFC 2450
 しかし、RFC 2374のように各NLAに24ビットものアドレス空間を与えてしまうことに対し、異論が噴出した。そこで1998(平成10)年、RFC 2450として暫定的な期限付き割り当てポリシーが定められた。
 ここでは、TLA IDとNLA IDの間にsTLA IDを設けている。
 この暫定割り当てポリシーにおいては、128ビットを、先頭から順に次のように用いることになった。
 暫定期間は、sTLA IDの申請組織数が、全体として100を超えるか、または同一レジストリ内で60を超えるまで、とされた。程無くして暫定期間は終了となった。

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