京 (スーパーコンピューター)
読み:けい
外語:K computer

 理化学研究所(理研)が富士通と共同で開発を進めたスーパーコンピューター
目次

概要
 日本の、理化学研究所に設置されたスーパーコンピューターである。
 神戸市の理化学研究所 計算科学研究機構(AICS)に設置されている。
 この設置にともない、近くを通っていた神戸新交通ポートアイランド線の最寄り駅だった「ポートアイランド南」駅が「京コンピュータ前」に変更されている。

特徴

スカラー型
 TOP500に登録された情報は、次の通りである。
 元々は、ベクトル型とスカラー型の複合型コンピューターとなる予定だったが、ベクトル型のNECが撤退したため、富士通のスカラー型で作られることになった。
 このため、富士通のSPARCつまり「汎用CPUを並べただけ」の装置となった。それ自体は悪いことではなく、ありがちなことだが、面白みに欠けることは事実である。

TOFUインターコネクト
 京では、富士通が「Tofu」と呼ぶ、独自のインターコネクトが採用されている。
 12ノードをグループとし「Tofu」と呼び、各Tofuユニットは3Dトーラス構造で接続される。
 このインターコネクトは、「ICC」と呼ばれるLSIで行なわれており、ノードの接続や、3Dトーラスを構成するリンクのためのポートがある。

補足

由来
 2009(平成21)年11月、民主党による事業仕分けで「凍結」と判定され、ノーベル賞受賞者やフィールズ賞受賞者らが緊急会見をするなど大きな議論を巻き起こし、結果として満額ではないが予算が出ることになったという稀有なスーパーコンピューターである。
 開発が遅れたこともあり、開発中のスーパーコンピューターBlue Watersに勝てない見込みだったが、こちらが未完成のため、第37回TOP500で一位、演算性能で世界最速の座に輝くことができた。その後、Blue Watersは開発が断念された。

世界最速
 事業仕分けの「仕分け人」となった民主党の蓮舫は「世界一になる理由は何があるんでしょうか?」「2位じゃダメなんでしょうか?」という不適切発言が話題となり、ノーベル賞受賞者やフィールズ賞受賞者らが緊急会見した際にも、この発言に対して批判が相次いだ。
 それでも無事にTOP500で、2004(平成16)年11月の地球シミュレータ以来、約7年ぶりに日本が演算性能で世界最速の座に返り咲いた。
 また2011(平成23)年11月2日、LINPACK性能で10.51PFLOPSとなり、目標の10PFLOPSが達成されたと発表された。全864筐体(CPU数8万8128個)をネットワーク接続した最終構成での記録で、実行効率は93.2%となり、6月にTOP500で一位を記録した際の93.0%を上回った。
 京は、2012(平成24)年6月発表の第39回TOP500で2位に転落するまで、約1年間、演算性能で世界最速を誇った。

総合性能
 コンピューターは、演算性能だけ良ければ良いと言うものでは無い。システム全体としての性能が当然求められる。
 TOP500では分からない、複雑な計算の計算速度、要するに実運用時の速度を競う国際ランキング「HPCチャレンジアワード」で、2011(平成23)年から4部門のうち3部門で1位となり、3年連続で総合世界第1位となっている。

コストパフォーマンス
 2012(平成24)年に本格稼働で10PFLOPSに1100億円は高すぎるとの批判ももちろんあり、コストパフォーマンスという点においては、京は完成前から既に失敗しているとも言える。
 国産のスーパーコンピューター技術は維持されるべきだが、今後が懸念される事件となった。これをどのように将来のプロジェクトに繋げていくか考えていくことが、国家戦略上も重要である。

ゴードン・ベル賞
 独立行政法人理化学研究所(理研)、筑波大学東京大学富士通株式会社の研究グループは、理研と富士通が共同開発している京を用いた研究成果を、スーパーコンピューターの国際会議SC11で発表、2011(平成23)年11月17日(現地時間)にゴードン・ベル賞の最高性能賞を受賞した。
 受賞理由となった成果は、次世代半導体の基幹材料として注目が集まっているシリコン・ナノワイヤー材料の電子状態を計算したことによる。
 日本の研究チームが受賞するのは、初代地球シミュレータでの研究以来である。

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