親指シフト
読み:おやゆびシフト
外語:thumb shift
1987(昭和62)年に
富士通
の神田泰典により開発された日本語キーボード。及び、このキーボードで使うかな入力方式。
目次
概要
特徴
外観
入力方法
利用方法
製品
補足
入力検定試験
打鍵数
エミュレーター
概要
元々は、富士通の日本語ワードプロセッサーOASYS用として、「OASYS100」の発売に合わせてOASYS開発者である神田泰典により開発された。
その後、親指シフト入力方式はNICOLA(日本語入力コンソーシアム)という10のメーカーによる非営利団体に権利の一部が委譲されて今日に至る。NICOLAによる拡張親指シフト入力を「NICOLA配列」と呼ぶ。
キーの配列については、JIS X 4064:2002「仮名漢字変換システムの基本機能」付属書2付図2「NICOLAキーボードのキー配列」で定義されている。
特徴
外観
キー配列の、普通のキーボードならスペースキーがある場所に「親指左キー」と「親指右キー」が備えられているのが特徴である。このキー周辺は製品により相違があるが、スペースキーは親指左と兼用な製品または親指右の右横に付けらられている製品があるほか、漢字変換用の「無変換キー」と「変換キー」が親指左/親指右の真下に用意されている製品と、富士通のノートパソコンのように親指左と無変換、親指右と変換を一体化したりするものなどがある。
カナを直接入力できるのは
JISかな入力
と同様ではあるが、親指シフトのカナはキーボードの下3段の31個のキーに存在する。そしてキーボードの製品にもよるがこのキーは左側と右側で色が若干変えられていて、左右に分かれている。5TGBから左が左側であり、6YHNから右が右側である。
キートップに基本的には三つの文字が配列されており、二つのカナが表記されているのが特徴である。英字や記号類はQWERTY配列でキートップの左下に英字や記号、右上と右下にカナが表記されている。小文字(ぁぃぅぇぉゃゅょっ)は大文字とは別のキーが割り当てられている。拗音(ぱぴぷぺぽ)が刻印されている右側の5つのキーのみ例外的に、キートップの中央に拗音の文字が表記されている。
入力方法
英字や記号類はQWERTY配列であるため、英字入力モードでは普通のJISキーボードと大差はない。特徴的なのは、カナの入力方法である。
日本語の入力方法が非常に特徴的なのが親指シフトであり、日本語入力モードでキーをそのまま打てばキートップの右上にあるカナが入力できる。右上にないカナ(右下や中央)を入力するのに使うのが、二つの親指キーである。濁音は、まず清音のキーは全て右上の刻印となっていて、それと反対側の親指キーと共に入力する。
つまり、次の通りである。
左側
左側の右上にある清音カナは、そのままキーを打てば入力できる
左側の右下にあるカナは、親指左キーとともにキーを打てば入力できる
左側の右上にある清音カナに対応する濁音カナは、親指右キーとともにキーを打てば入力できる
右側
右側の右上にある清音カナは、そのままキーを打てば入力できる
右側の右下にあるカナは、親指右キーとともにキーを打てば入力できる
右側の右上にある清音カナに対応する濁音カナ、および右側の中央にある半濁音カナは、親指左キーとともにキーを打てば入力できる
親指キーがシフトキーのように機能するため、これが親指シフトと言われるゆえんであり、
JISかな入力
や
ローマ字入力
ではほぼ使われていなかった親指を活用して効率的にかな入力することを目指した方式である。
利用方法
OASYS以外、例えば、
Microsoft Windows
や
Mac OS
で汎用的に親指シフト入力をするためには、次の方法が必要だった。
富士通製の親指シフトキーボードと、富士通製の日本語IMEのOAKを組み合わせる
サードパーティー製の親指シフトキーボードを購入する
ソフトウェアエミュレーターによるNICOLA配列の疑似親指シフト入力をする
NICOLA配列の親指シフトエミュレーターは幾つかの種類が開発されているが、OAKにもエミュレーターが同梱されている。
製品
一時期は隆盛を極めた頃もあったが利用者数は激減、結果として富士通の親指シフトキーボードは2021(令和3)年1月末をもって終了となっている。
別途の
デバイスドライバー
が必要になるが、
PC/AT互換機
用キーボード、古くは98用や旧Mac用にも幾つかの製品が販売されていた。良く知られるものとして、次のようなものがあった。
富士通 FKB8579-661EV (希望小売価格15,000円(税別))
富士通 FMV-KB611 (希望小売価格15,000円(税別))
富士通 FMV-KB613 (PS/2接続) (希望小売価格30,000円(税別))
富士通 FMV-KB232 (USB接続) (希望小売価格28,000円(税別))
リュウド R board Pro for PC (希望小売価格49,800円(税別))
リュウド Rboard Pro for 98 (希望小売価格54,800円(税別)) ※PC-9800シリーズ用
リュウド Rboard Pro for Mac (希望小売価格54,800円(税別)) ※Macintosh用
以上は全て販売終了している。
補足
入力検定試験
効率的なかな入力方式であったため、日本語入力検定試験の上位をこの入力方式の利用者が総なめしていた時代もあった。
また、文章のプロにこの入力方式を愛用する人も多かった。
しかし、JIS規格に採用されなかったことなどから親指シフト方式を採用するメーカーは殆どなく、富士通自体もOASYS以外ではあまり積極的に親指シフト入力を支援することは無かったため、すっかり「マイナーな日本語入力方式」の憂き目をみてしまった。
打鍵数
親指シフト入力では、日本語入力に必要なカナおよび記号の約80個を英文タイプライターと同じ3列3段31個のキーに配列して、打鍵時の指の動きを最小限としている。
親指キーと文字キーとの同時打鍵を含む操作のためJIS配列と比較して約30%少ない打鍵数でかな入力が可能である。
エミュレーター
一般的な
106キーボード
のキー配列をNICOLA配列に置き換え、親指シフトキーボードのように使えるようにするものが、エミュレーターないしエミュレーションソフトである。
MS-DOSや古いMacintoshの時代から色々なものが使われてきた。もちろん本物のキーボードを使う場合の使い勝手には敵わないが、
ノートパソコン
のように自由にキーボードが交換できないようなマシンでは重宝されたようであり、また実際のキーボード製品がなくなってしまった現在ではエミュレーターを使う以外に親指シフトを使う方法がない。しかし、Windows10やOS Xでも正常に動作するものは希少である。
現存するエミュレーターは、
NICOLA 日本語入力コンソーシアムのエミュレーションソフト
のページに記載されている。
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