Rh式血液型
読み:アーエイチしきけつえきがた
外語:Rh blood type

 血液型分類法の一つ。赤血球の血液型。Rh式血液型を決定する遺伝子は1番染色体に存在する。
目次

由来
 1940(昭和15)年にオーストリー出身の医学者カール・ランドシュタイナー(Karl Landsteiner)と、弟子のアレクサンダー・ソロモン・ウィーナー(Alexander Solomon Wiener)が、人間とアカゲザル(Rhesus monkey)の赤血球に、共通の血液型抗原があることを発見したことに由来する。
 この発見により、ヒトにおける新生児溶血性疾患の機序が解明された。この病態は、胎児のRh因子により免疫され母体内に出来た抗体(Rh抗体)が再び胎盤を介して胎児血液中に入るため、胎児の血球が破壊されると解明された。
 ここから、この抗原の有無によって分ける血液型をRh式血液型と呼ぶようになり、現在の血液型検査ではABO式血液型に加え、必ずRh式血液型も検査される。

特徴

抗原
 Rh式血液型における抗原は赤血球の血球膜にあり、現在は48種類が発見されていると言われている。
 中でも重要視されるのはC、c、D、E、eの5種類である。なお、各抗原の大文字小文字は抗原性の大小に由来するもので、遺伝的な優劣を表わすものではない。
 CとDの2種類の対立抗原の組み合わせでは、Ce、cE、CE、cdがあり、Dの対立抗原dは存在しないが便宜的にdと記述すると、DCe、dCe、…のように3種の抗原の組み合わせとなる。
 C、c、E、eの4抗原は、D抗原と比べると抗原性が低いため、一般にはD抗原に対してのみ記載するが、輸血の際に問題が生じた場合は他の抗原についても精査が必要となる。

メンデルの法則
 血液型はメンデルの法則に従って遺伝する。それは即ち父と母の性質を受け継ぐということである。
 DNAは対になっていて、遺伝で用いられる細胞減数分裂によって片方のDNAのみが使われる。親がEe型とee型であるなら、片方ずつの組み合わせにより、通常、子はEe型またはee型となる。このとき、eeをE-とし、EeやEEはE+とする。
 C、c、D、E、eの組み合わせは次のようになり、全部で18種類がありうる。

稀血
 稀に、D以外(C/c/E/e)の抗原を持たない場合や、D含めて全て(C/c/D/E/e)の抗原を持たない場合がある。
 D抗原を持つ場合、CDEと並べてCとEを欠くことから「‐D‐」(バーディーバー)という。日本人では20万人に1人未満とされる稀血であり、D抗原しか調べなければ単なるRh陽性に過ぎないが、妊娠や輸血の際に抗体を産生することがある。輸血の際にはこの稀血である「‐D‐」が必要となる。
 D抗原も持たない場合、全てを欠くことから「Rhnull」(アーエイチナル)という。日本人ではわずか数人しかいないらしい。

D

D抗原
 抗原の中でも、特に免疫反応の強いD抗原が臨床的に重要であり、これの有無をRh式血液型の代表として、D抗原陽性をRh陽性またはRh(+)、D抗原陰性をRh陰性またはRh(-)、とそれぞれ呼び分ける。
 有性生殖生物は父母より遺伝子を貰うので、ここではDDおよびDdをRh(+)、持っていないddをRh(−)とする。
 日本人の約99.5%はRh(+)である。つまりRh(-)は約0.5%であり、200人に一人という割合である。この比率はABO式血液型を問わない。
 白人では、約85%がRh(+)、約15%がRh(-)であるとされる。

抗D抗体
 Rh(-)の人(dd)であっても、ABO式血液型などと違い最初は抗D抗体を持っていない。そのため、間違ってRh(-)の人にRh(+)の血液を輸血してしまっても、一回目は抗D抗体の生成だけで致命的な問題はないが、二回目以降は副作用を生じる。
 Rh(-)の母親がRh(+)の子(DdまたはDD)を出産するときなども、処置を怠れば抗D抗体を生成することになり、2子目以降の妊娠・出産に問題を起こすこともある。
 逆に、Rh(-)の血液をRh(+)の人に輸血することは全く問題がない。

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