電子殻
読み:でんしかく
外語:electron shell
原子に存在する電子が収まる場所のこと。
概要
電子殻は、原子核に近いところから順に、K殻、L殻、M殻、N殻、O殻、P殻、Q殻、…と呼ばれる。これを主殻という。
それぞれの電子殻の主殻には、副殻と呼ばれる、エネルギーの違う殻が存在している。そして、それぞれの副殻には電子が二つ、つまり電子対が一つだけ収まる。
特徴
量子数
電子は、量子条件として存在する。つまり、その軌道はアナログな連続量ではなく、ある決まった量子数ごとに軌道がある。
より具体的には、量子論により、電子は波長の整数倍が円周と一致する軌道にしか存在できない。
この量子数はn=1,2,3,4…のように表わされ、n=1がK殻、n=2はL殻、n=3はM殻、…として対応する。
電子数
各電子殻には、入ることの出来る電子数が決まっている。
電子数は量子数と比例関係にあり、2n2個の電子が入ることが出来る。
電子殻 | 量子数 | 電子数 | 副殻 |
n | 2n2 |
K殻 | 1 | 2 | 1s |
L殻 | 2 | 8 | 2s、2p |
M殻 | 3 | 18 | 3s、3p、3d |
N殻 | 4 | 32 | 4s、4p、4d、4f |
O殻 | 5 | 50 | 5s、5p、5d、5f、5g |
P殻 | 6 | 72 | 6s、6p、6d、6f、6g、6h |
Q殻 | 7 | 98 | 7s、7p、7d、7f、7g、7h、7i |
副殻の数
例えばM殻であれば、三つの副殻がある。
s軌道に対応する最もエネルギーの低い副殻が一つ、p軌道に対応する中くらいのエネルギーの副殻が三つ、d軌道に対応するエネルギーの高い副殻が五つある。
エネルギー
電子殻は外ほど高エネルギーである。そして、各電子殻にある副殻は、s、p、d、f、の順に高エネルギーとなる。
副殻という単位で考えると、ある電子殻の最もエネルギーの高い副殻は、一つ外側の最もエネルギーの小さい副殻よりエネルギーが高いことがある。例えばM殻の最もエネルギーの高い副殻3dは、N殻の最もエネルギーの低い副殻4sより少しエネルギーが高い。
このため、カリウムの19個目の電子はM殻ではなくN殻に入ってしまうのである。そして4pより3dの方が少しエネルギーが低いので、4sが埋まった後は3dが埋められることになる。
参考(S〜V原子の電子配置表)
| K | L | M | N | O | P | Q |
|1s |2s 2p|3s 3p 3d|4s 4p 4d 4f|5s 5p 5d 5f|6s 6p 6d|7s 7p|
-------+---+-----+--------+-----------+-----------+--------+-----+
16 S | 2 | 2 6 | 2 4 | | | | |
17 Cl | 2 | 2 6 | 2 5 | | | | |
18 Ar | 2 | 2 6 | 2 6 | | | | |
19 K | 2 | 2 6 | 2 6 | 1 | | | |
20 Ca | 2 | 2 6 | 2 6 | 2 | | | |
21 Sc | 2 | 2 6 | 2 6 1 | 2 | | | |
22 Ti | 2 | 2 6 | 2 6 2 | 2 | | | |
23 V | 2 | 2 6 | 2 6 3 | 2 | | | |
-------+---+-----+--------+-----------+-----------+--------+-----+
周期表を見てみると、Caの次にScからZnまで、第2周期には存在しない「新しい部分」が増えている。ここの部分がM殻に残りの10個の電子を埋めているところ、つまり3d軌道に電子が詰まっていっているところである。
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