窒素固定
読み:ちっそこてい
無機の窒素を含窒有機化合物にする反応のこと。
概要
一部の微生物による、空気中の窒素(N2)をアンモニア(NH3)に還元する反応などがあげられる。
こういった生物は、窒素と水素を使い、ATPをADPに変えてエネルギーとしており、この際にアンモニアが発生する。
特徴
由来
地球の生命は窒素を蛋白質やDNAの材料としており、窒素は重要な元素である。
しかし窒素分子は安定な化合物であることから、いくら窒素が空気の約8割を占めているといえども、ここから直接蛋白質やDNAを合成することはできない。そこで生物が窒素を取り込むためには、窒素分子をアンモニアに変換する「窒素固定」反応を用いて、窒素化合物を生成する必要がある。
自然界では、この役目を光合成をするシアノバクテリアやメタン菌などがニトロゲナーゼという酵素を用いて実施してきており、これが光合成による酸素の生産と共に、地球の生命進化の原動力となった。
この生物の進化の過程が実証されたのは2014(平成26)年になってからである。
2006(平成18)年に海洋研究開発機構の有人潜水調査船「しんかい6500」と支援母船「よこすか」により深海から超好熱性のメタン菌が採取され、これを培養して実験したところ、窒素固定をしており初期の深海熱水環境でも活発に窒素固定したという。
この結果は、超好熱性のメタン生成古細菌(メタン菌)が35億年前の深海熱水環境に存在した可能性が高いことを示しており、この菌が生命進化の起源になったとする説が支持されるとしている。今回の研究結果を基にした初期生物進化は次のようだとしている。
- 約45億年前に地球形成
- 約38億年前までには原始生命が海中で誕生
- 35億年前に深海熱水域でメタン菌が窒素固定能を獲得
- 34億年前以降に光合成細菌が海洋表層に出現
- その後、生物が爆発的に増える
生命を支える窒素固定の遺伝子は地球初期の深海熱水環境で生まれ、これが生命共通祖先またはメタン菌から光合成細菌の祖先へと伝わったと結論づけられたという。
植物
マメ科植物は根に窒素化合物を作る細菌を持っている。このため荒れた土地であっても自発的に「窒素肥料」を作ることができ、生育することが出来る。またこのため、マメ科植物を育てると土地が肥える。
日本でも、稲の転作として大豆がよく育てられているが、しかし窒素の多い水田で育てた米は品質が落ちるという難点がある。
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