グラフェン
読み:グラフェン
外語:graphene
炭素原子が六角形の網の目状に並んだ単層膜。グラフェンが多層に重なったものを黒鉛(グラファイト)という。
概要
グラフェン自体は原子1個分の層であり、これが多数積み重なると黒鉛になる。
グラフェンは不安定であり、この1層だけを取り出すことは不可能と思われてきた。しかし英マンチェスター大の次の2教授が、黒鉛から粘着テープで剥離させるという斬新な方法でグラフェンを作成した。そのグラフェンの研究が評価され、2010(平成22)年にノーベル物理学賞を受賞した。
- アンドレ・コンスタンチノヴィチ・ゲイム (Андрей Константинович Гейм)
- コンスタンチン・セルゲーエヴィチ・ノヴォセロフ (Константин Сергеевич Новосёлов)
特徴
電子易動度
通常の物質中では、電子は様々な障害にぶつかり流れが妨げられる。対してグラフェン上では粒子の質量がゼロとして扱える特殊な状態となり、障害を素通りできる。
ゲイム教授はこのグラフェン上の電子を、質量がゼロだと考えられていたニュートリノに喩えて「鉛筆の中のニュートリノ」と表現していたとされる。
電子の動きやすさを電子易動度(いどうど)という。グラフェンの電子易動度はシリコンの10倍以上とされ、グラフェンの応用でコンピューターの高速化などが期待されている。グラフェン自体は炭素つまり「半金属元素」であるが、半導体にする方法は以前より理論的に導かれていた。2010(平成22)年1月にはIBMが2層グラフェンを使った実験で、トランジスタの実用化に目処をつけた
光の透過率
グラフェンは量子効果により、光の透過率も高い。
将来的に、太陽電池や液晶ディスプレイなどで使われる透明電極材料を置き換える可能性もある。
量産
安価な大量生産方法についても研究が進められているが、2011(平成23)年1月8日、大分大学の豊田昌宏教授と兵庫県神戸市のベンチャー企業「株式会社インキュベーション・アライアンス」がグラフェンの安価な大量生産方法を確立した、と報道された。
高速・高圧CVD(化学気相析出法)で3次元・同時多発的に花弁状のグラフェンであるグラフェンフラワーを作り、グラフェンフラワーに超音波を当てて剥離することでグラフェンを取り出すものとされている。
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