シーベルト
読み:シーベルト
外語:Sv: Sievert
人体に吸収される
放射線
の影響(
放射線被曝
)を数値化したもの。放射線が人体に与える影響を表わす単位。記号はSvである。
目次
概要
特徴
係数
規模
放射線被曝
外部被爆と内部被爆
体内半減期
人体への影響
主な被曝量
関連単位
概要
吸収線量(
グレイ
)に、放射線の種類ごとの係数を乗じて算出する。古くはレム(記号はrem)が使われていた。1Sv=100rem、1rem=10mSvに相当する。
シーベルト(Sv)もグレイ(Gy)も、同じ「J/kg」の次元の単位であるが、考え方が違っている。放射線には様々な種類が存在し人体が放射線を吸収した場合には種類(α線、β線、など)ごとに人体に対する影響に差がある。
β線
に対し
α線
は、同じエネルギー(例えば1グレイの吸収線量)が与えられても20倍ほど影響が大きい。そこで、実際の物理量であるグレイに対し、人体への影響を示す係数(1〜20)を掛けて、これをシーベルトと呼ぶ。
シーベルトは、人体への影響を基準とした単位である。
特徴
係数
Gyが物理量の単位なのに対し、Svは防護量の単位である。現行の放射線障害防止法も、被曝の単位としてシーベルトが使われている。
ここで掛けられる係数は、
β線
、
X線
、
γ線
では1、
α線
や重粒子線は20、
中性子線
はエネルギーにより5/10/20のいずれかの値となる。
バケツ臨界のJCO事故など特殊な場合を除き、一般的に被曝はX線やγ線が主なので、Gy=Svと扱っても大きな問題にはならない。
規模
↑強い
10
3
シーベルト (kSv)
4Sv 半数致死
10
0
シーベルト (Sv)
500mSv 血液像変化
10
−3
シーベルト (mSv)
2.4mSv 年間の自然放射能
10
−6
シーベルト (μSv)
7μSv 一日の自然放射能
↓弱い
放射線被曝
大自然には放射線があふれている。
太陽
も、
太陽風
として日々放射線を放っており、放射線は常に
地球
に降り注いでいる。また土や岩といったものにも
放射性同位体
は大量に含まれることから、大自然から放射線は常に放射され、生物は常に
放射線被曝
している。
土壌や標高などに左右されることになるが、
人間
1人あたり世界平均で年間約2.4
ミリシーベルト
の
自然放射線
を浴びるとされる。
外部被爆と内部被爆
体外にある放射性物質から放射線を受けることを外部被曝、体内に摂取した食品などに含まれる放射性物質から放射線を受けることを内部被曝という。
「シーベルト」という単位は「人体への影響を数値化したもの」であるため、内部被爆と外部被爆の差は無関係である。
「同じシーベルトでも内部被曝の方が影響が大きい」などと言っている人は詐欺師なので、注意が必要である。
体内半減期
放射性元素は、確率的に、半減期ごとに核分裂をし放射線を出す。
半減期を過ぎると比較的短期間で消滅することから、概ね、危険な期間は半減期の間ということになる。
体内の放射性元素、例えば
放射性セシウム
の物理的半減期は30年であるが、体内からは排出されるため、体内にとどまる量としての半減期(体内半減期)は100日程度となる。
このような点を加味して、ベクレルあたりのシーベルト値は決められているのである。
人体への影響
僅かな放射線を浴びても人体への影響はなく、若干多いのはむしろ新陳代謝をもたらし健康に良いとする説もある(例えばラジウム温泉)。但し、大量の放射線は人体に有害である。
一説によれば、一回での線量ごとの影響は次のとおりとされる。
0.1シーベルト(100ミリシーベルト):
がん
になる人が増えはじめる
0.25シーベルト(250ミリシーベルト):
白血球
が一時的に減少する
0.5シーベルト(500ミリシーベルト): 末梢血中の
リンパ球
が減少する
1シーベルト(1000ミリシーベルト): 10%の人が嘔吐を催す
4シーベルト(4000ミリシーベルト):
半数致死量(LD
50
)
6〜7シーベルト(6〜7000ミリシーベルト):
99%致死量(LD
99
)
200ミリシーベルト以上の線量では、線量の増加とがん発生率の増加が比例的な関係となる。線量が1シーベルト(1000ミリシーベルト)に達すると、がんの増加発生率は自然発生率の60パーセント(つまり合計して1.6倍)にもなる。
つまり、放射線も効果的な量の範囲はあり、ある程度は被曝するのが健康のためには良いため必須であるが、度を超えれば有害ということである。「過ぎたるは及ばざるがごとし」と昔から言われているとおりで、例えば塩分は一定量はないと死んでしまうため必須であるが塩分の摂り過ぎは高血圧や様々な疾患をもたらすのと同様である。
主な被曝量
Svはシーベルト。
Sv→1/1000→mSv→1/1000→μSv→1/1000→nSv
被曝量については時と場合により変化するので、必ずしもこの通りとは限らない。また実際の生活ではそれぞれで独立して被曝することになるので、合計する必要がある。更に、一回あたり、一時間、一日、など単位が混在しているので注意。
↑弱い
10
−12
シーベルト (pSv)
0.1nSv ‐ 日本の
原電
から周辺に放射される
放射線量
の実際値で一時間(0.001mSv/年未満)
10
−9
シーベルト (nSv)
6nSv ‐ 日本の原電で、周辺に住んだ時の放射線量の目標値で一時間(0.05mSv/年)
50nSv ‐ 誰かと一緒に寝る
100nSv ‐
バナナ
を一本食べる
10
−6
シーベルト (μSv)
1μSv(1000nSv) ‐ 日本の原子力発電所の周辺に一年間住む(実際値、
自然放射線
は含まない)
3.5μSv ‐ 福島原電の周囲の平均的な都市で一日過ごす(2011(平成23)年3月17日現在)
20μSv ‐ 口腔レントゲン撮影(小型写真)
40μSv ‐ 口腔パノラマ撮影(大型写真)
40μSv ‐ ニューヨークからロサンゼルスまで飛行機に乗る
50μSv ‐ 日本の原子力発電所の周辺に一年間住む(目標値)
72μSv ‐ 世田谷ラジウム問題で、室内での24時間線量 (目安)
60μSv ‐ 三朝温泉(鳥取県)の泉水を1リットル吸い込む(ラドン濃度683.3マッヘとした場合)
80μSv ‐ スリーマイル島原電事故で周囲16km以内にいた人の平均被曝量
100μSv ‐ 乳房レントゲン撮影(マンモグラフィー使用時、目安)
260μSv ‐ 柏崎刈場原子力発電所のモニタリングポストの位置で一年間(約30nGy/h)、自然放射線を含む
390μSv ‐ 体内の
放射性カリウム
が一年間に発する放射線量
600μSv ‐ 世田谷ラジウム問題で発見された夜光塗料瓶の表面放射線量(一時間)
10
−3
シーベルト (mSv)
1mSv(1000μSv) ‐ スリーマイル島原電事故で観測された最大被曝量
2.1mSv ‐ 日本で、一年間に受ける自然放射線量の平均
2.4mSv ‐ 世界平均で、一年間に受ける自然放射線量の平均
3.6mSv ‐ 2011(平成23)年3月16日と翌日、福島原電の50km北東で観測された放射線量(他のエリアでは殆ど上昇していない)
4mSv ‐ 胃透視(バリウム検査) (目安。変動あり)
6mSv ‐ チェルノブイリ原電近辺での一時間あたりの放射線量(2010(平成22)年)、但し場所により大きく変動あり
7mSv ‐ 胸部CT検査 (目安)
20mSv ‐ 腹部CT検査 (目安)
26mSv ‐ 世田谷ラジウム問題で、24時間室内にいた場合の年間線量 (目安)
30mSv ‐ 頭部CT検査 (1スキャンの目安、20スキャンで570mSv程度)
50mSv ‐ アメリカ国内の原子力産業従事者の年間許容被曝量
80mSv ‐ たばこを1日1.5箱吸った場合の1年での被曝量
100mSv ‐ 短時間で浴びたとき、がんのリスク向上が見られる最低被曝量
400mSv ‐ 短時間で浴びたとき、毒性が見られる被曝量(場合による)
10
0
シーベルト (Sv)
2Sv(2000mSv) ‐ 短時間で浴びたとき、死亡する可能性もある深刻な被曝
4Sv ‐ 短時間で浴びたとき、助からない可能性のある非常に深刻な被曝
8Sv ‐ 短時間で浴びたときの、致死被曝量
50Sv ‐ 事故直後のチェルノブイリ原電の炉心が10分間に発した放射線量
↓強い
関連単位
国際単位系では、
SI接頭語
を付けることで微小または巨大な値を簡潔に表現できる。
以下は、SI的に可能性のありそうな単位である。実際には、その殆どは使用実績が無い。
ヨクトシーベルト(ySv) 10
−24
ゼプトシーベルト(zSv) 10
−21
アトシーベルト(aSv) 10
−18
フェムトシーベルト(fSv) 10
−15
ピコシーベルト(pSv) 10
−12
ナノシーベルト
(nSv) 10
−9
マイクロシーベルト
(μSv) 10
−6
ミリシーベルト
(mSv) 10
−3
センチシーベルト(cSv) 10
−2
デシシーベルト(dSv) 10
−1
シーベルト
(Sv) 10
0
デカシーベルト(daSv) 10
1
ヘクトシーベルト(hSv) 10
2
キロシーベルト(kSv) 10
3
メガシーベルト(MSv) 10
6
ギガシーベルト(GSv) 10
9
テラシーベルト(TSv) 10
12
ペタシーベルト(PSv) 10
15
エクサシーベルト(ESv) 10
18
ゼタシーベルト(ZSv) 10
21
ヨタシーベルト(YSv) 10
24
しかしヨタシーベルトなどの単位は現実的でなく、このような単位を使ってもヨタ話と言われる。
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