いて座A
読み:いてざ-エイ
外語:Sgr A

 銀河中心に存在する電波源の複合体。天球においてはいて座の方向に見えることから、この名がある。
目次

構造
 銀河中心は、実際には複数の天体の集合体であり、その総称が「いて座A」である。
 この銀河中心には三つの名前が付けられており、次のように呼ばれている。
 この他、複数の恒星やガス雲の存在が知られる。

特徴

構造

いて座Aイースト
 銀河中心を取り巻くように存在する超新星残骸である。
 およそ25光年の幅を持ち、3〜10万年程度前に爆発したものと推測されている。
 但し、この規模の構造を作るためには標準的な超新星爆発にして50〜100回分程度のエネルギーが必要であるとの説もあり、由来は明らかになっていない。ある説では、中心のブラックホール重力で圧縮された近傍の恒星が爆発したもの、とする。

いて座Aウエスト
 中心にあるブラックホール降着円盤が正体であると考えられている。半径は1光年以上あると見込まれ、1,000km/s(864.0km/cBeat)以上の速度で回転している。
 この周辺にはさらに円形状に回転する分子リングがあり、3本の腕(ガス雲)がブラックホールへと伸びている。これを「ミニスパイラル」と呼ぶ。但し名前に反し、このミニスパイラルの3次元構造はらせん構造ではない。
 このミニスパイラルガス雲の表面はイオン化されているが、これはこの周辺に多数ある大質量星(OB型星など)が放射する紫外線の影響である。

いて座A*
 いて座A*は電波源である。
 銀河系の中心部のなかで、さらに中心となる、ブラックホールであると考えられている。
 いて座A*には、近傍に恒星「S2」と、公転するガス雲「G2」が存在する。

周辺天体

S2
 S2は、いて座A*の近傍に多数ある恒星のうちの一つ。
 いて座A*すなわち超大質量ブラックホールの周回軌道を取っていると見られており、観測結果から、いて座A*より17光時(約123au)の距離を公転しているとされる。
 直接観測できないブラックホールの代わりにこの天体が観測され、銀河中心がブラックホールであることの証拠となっている。

G2
 G2は、いて座A*を公転するガス雲。
 離心率が非常に大きく、極端な楕円軌道を取っており、近点距離と遠点距離の差が激しい。
 このためG2はブラックホールへの接近と離脱を繰り返しているが、これを著している時点で最も最近の接近は地球時間の2013(平成25)年7月1日とされている。このとき太陽の50倍程度に輝いたとされているが、可視光での観測は不可能である。

GCIRS 13E
 GCIRS 13Eは、銀河系中心にある赤外線源の13番目の東側(E)を意味している。東側としているのは、すぐそばにGCIRS 13Wとする恒星が存在しており、区別のためである。
 GCIRS 13Eはいて座A*を公転している星団で、少なくとも7つの大質量星が存在する。いて座A*からの距離は約3光年で、公転周期は約4万年。
 元々は60光年程度離れたところで誕生し、この頃は更に多くのO型星やウォルフ・ライエ星などの大質量星を含んでいたと見られるが、徐々に数を減らしながら、少なくとも10万年以内のうちにいて座A*の重力で現在の距離まで移動したとみられている。
 この星団の中心には、太陽質量の1300倍の中間質量ブラックホールが存在するという仮説が存在するが、星団の動きなどからこれを否定する説もあり、決着は付いていない。

領域内天体
 フランスの太陽系外天体目録SIMBADに記載のある天体は、次の通りである。
 天体は無数に存在するようだが、ここでは代表的な天体リストから引用する。

EG97
 SIMBADのEG97として記載があるもの。SIMBADに情報がない天体は略す。

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