心筋梗塞
読み:しんきんこうそく
外語:myocardial infarction

 心臓冠動脈が何らかの原因により一定時間以上閉塞し、心筋が壊死するなど不可逆な障害(障礙)を受けた状態のこと。
目次

概要
 冠動脈が閉塞する原因としては、動脈硬化性病変部における血栓の形成が最も一般的である。
 速やかな処置により死亡率を下げることは可能であるが、放置すれば心筋の壊死範囲が広がるため、いずれ心停止を起こし、死亡する。

治療
 冠動脈が閉塞するのが病因である以上は、その閉塞した冠動脈を再度開通させるのが、もっとも治療効果が高い。
 幾つか方法があるが、冠動脈にできた血栓を溶かす「血栓溶解療法」、または風船療法とも呼ばれている「冠動脈形成術(PTCA)」がよく行なわれる。

薬物療法
 冠動脈を広げる薬、動脈硬化の進行を抑制する薬、血栓が出来にくくなる薬などを利用し、症状の改善を図る内科的療法である。症状が軽い場合、予防などの場合に、この療法が選択される。
 アセチルサリチル酸はCOX-1酵素を阻害するため、小用量では抗血小板凝固作用がある。これにより心筋梗塞や脳梗塞の予防効果が期待されている。
 日常の食事として納豆に含まれるナットウキナーゼなども、血栓を溶かす作用が良いとされている。但し、納豆を食べてもナットウキナーゼは腸で分解されてしまうので、薬効はないと考えられている。成分を抽出し、血液中に直接入れなければ効果は期待できない。
 なお、医薬品としては同等の目的でウロキナーゼが使われるが、効果はナットウキナーゼに劣るとされている。

冠動脈バイパス術
 冠動脈の狭窄部位または詰まった部位を迂回するように、血管で迂回路を作る外科的療法である。
 血管は太ももなどから得、これを片方を冠動脈に、もう片方を詰まる前の場所か、大動脈に縫い付ける。もって、血液は詰まった部分を迂回して流れるようになる。

経皮的冠動脈形成術(PTCA)
 PTCAというのは、先端に風船などを付けたカテーテルを用い、狭くなった血管部に通し、ここで風船を膨らませて血管を広げる療法である。
 その他にも同様の方法で、様々な療法が確立している。

バルーンカテーテルによる風船療法
 単にPTCAと言えば、これを言う。
 詰まり掛けた血管には脂質(コレステロール)が沈着している。そこで、ここで風船を膨らませ、血管を押し広げるのがこの療法である。
  1. 患部にガイドワイヤーを通す。
  2. ガイドワイヤーに沿ってバルーンカテーテルを進め、狭窄部位で止める。
  3. 風船を膨らませる。
  4. 血管が広がる。
  5. バルーンを収縮させ、回収する。
  6. 無事に血流が回復する。
 この方法だと、概ね3〜6ヶ月で再び狭窄する再狭窄が起こるとされる。この場合には再びPTCAを行なうか、次のステント植え込み術を用いることになる。

ステント植え込み術
 基本的にはPTCAと同様に行なう。
  1. 患部にガイドワイヤーを通す。
  2. ガイドワイヤーに沿ってバルーンカテーテルを進め、狭窄部位で止める。
  3. 風船を膨らませ、同時にステントも広がり、血管壁に押し付けられる。
  4. ステントは血管壁に埋まり、血管が広がる。
  5. バルーンを収縮させ、回収する。
  6. ステントは残り、無事に血流が回復する。
 PTCAとの顕著な差は患部にステントが残ることであり、再び狭窄することが少ない。

DCA (動脈硬化部位切除術)
  1. 患部にガイドワイヤーを通す。
  2. ガイドワイヤーに沿って、狭窄部(動脈硬化病変)を削り取るカテーテル(DCAカテーテル)を進める。
  3. カッターで動脈硬化病変を切除。
  4. 削ったものはカテーテル内に集め、体外に取り出す。

ロータブレーター (動脈硬化部位粉砕術)
  1. 患部にガイドワイヤーを通す。
  2. ガイドワイヤーに沿って、狭窄部(動脈硬化病変)を削り取るカテーテル(ローターブレータ)を進める。
  3. カテーテルは回転しながら狭窄部を進み、動脈硬化病変を削り取る。
  4. 削られた病変部位、そのまま血管を流れ、体内で処理される。

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