ミトコンドリアイブ
読み:みとこんどりあ-いぶ
外語:Mitochondrial Eve

 ミトコンドリアDNAから導かれる、ヒト共通の母系祖先と考えられる人物のこと。
目次

概要
 生物細胞中にあるミトコンドリアは、常に母親から受け継がれる。
 母体内で卵子が作られる際に母親がもつミトコンドリアが受け継がれるためであり、父親の精子が受精した際に精子内にあるミトコンドリアについては、卵子に入らないか、または「自食」と呼ばれる作用によって分解されるため次世代には伝わらないとするのが一般的な説である。
 従ってこのミトコンドリアDNAを元に母親を先祖に辿って行くと、遺伝的に祖先とみなせる女性を特定することが可能であることを意味し、約20万年前のアフリカの女性に辿り着く。この女性がミトコンドリアイブであり、この仮説をミトコンドリアイブ仮説という。

特徴

Y染色体アダムとの関係
 男性が持つY染色体を元とした研究でも、父親を先祖に辿って行くとやがて約19万年前のアフリカの男性に辿り着くことが分かっており、これをY染色体アダムという。Y染色体アダムは、ミトコンドリアイブ仮説を裏づけるものとなっている。
 このことから、ヒトはアフリカで生まれ、その子孫たちがアフリカから脱出し世界に拡散したと考えられている。

父親由来のミトコンドリアDNA
 2011(平成23)年に米国科学アカデミー紀要で発表された研究結果では、ミトコンドリアは父親と母親の両方から由来することが示され、各家庭で父親の精子由来のミトコンドリアが数世代にわたって受け継がれているとしている。
 この研究は少数の家族のみを対象としたものではあるものの、卵子内に破壊されていない父親由来のミトコンドリアDNAを認めたとする。なぜ父親由来のミトコンドリアDNAが存在するかについては明らかとなってはいないものの、「ミトコンドリアは母性遺伝する」という前提が崩れる可能性があり、その場合はミトコンドリアイブ仮説は覆されることになる。

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