インシュリン
読み:インシュリン
外語:insulin

 蛋白質の一つで、血糖値を下げる働きをするホルモン。インスリンともいう。膵臓により作られる。
目次

物質の情報
 インシュリンはA鎖(アミノ酸数21)とB鎖(アミノ酸数30)からなり、両鎖間にはジスルフィド結合が二つ存在する。

一次構造
 構造は生物によって異なるが、あるヒト用のインシュリン製薬における一次構造は、次のようになっている。
 製薬では、B鎖の31位・32位にArg‐Arg、あるいはAsn‐Asn、などとしているものが多いようだ。

二次構造
 A鎖の二次構造(立体構造)は、二つのαヘリックスがあり、更に6位と11位がジスルフィド結合で接続されループ構造を作っている。
 A鎖とB鎖は二ヶ所でジスルフィド結合しており、A鎖7位とB鎖7位、A鎖20位とB鎖19位がそれぞれ繋がっている。
 B鎖の23〜26位付近に形成されるβ構造(βストランド)は、別のB鎖の同位置のβ構造と会合してβシートを形成する。このため、インシュリンは二量体になりやすい。

物質の特徴

生成
 インシュリンは膵臓のランゲルハンス島(膵島)のβ細胞により作られ、分泌される。
 もしこの分泌に何らかの異常が発生すると、糖尿病となる。

発見
 インシュリンはカナダの開業医Frederick Grant Banting(フレデリック・グラント・バンティング)、スコットランドの医学者John James Richard Macleod(ジョン・ジェームズ・リカード・マクラウド)らにより1921(大正10)年に発見された。
 かくして、糖尿病は薬物療法が可能な病となり多くの命が救われ、この二人は発見わずか2年後の1923(大正12)年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
 バンティングは得た賞金の半分を助手のチャールズ・ベストに、マクラウドも賞金の半分を助手の生化学者バートラム・コリップに、それぞれ与えたとされる。

構造の解析
 1953(昭和28)年にイギリスの生化学者Frederick Sanger(フレデリック・サンガー)らにより牛のインシュリンの全アミノ酸配列が解析された。
 この成果は、蛋白質の一次構造が決定された初の例でもある。
 これらの功績により、サンガーは1958(昭和33)年にノーベル化学賞を受賞した。

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