新世紀エヴァンゲリオン
読み:しんせいきエヴァンゲリオン
外語:NEON GENESIS EVANGELION

 GAINAXの制作による、日本のアニメ作品。その後、版権は監督である庵野秀明が設立したカラーへと移っている。
目次

概要
 大災害「セカンドインパクト」後の世界を舞台として、第3新東京市に襲来する謎の生命体であり敵である「使徒」と、対する人類側の兵器「エヴァンゲリオン」との対決を描いたSF作品である。
 TVシリーズおよび旧劇場版までのストーリー(以下、旧世紀版)と、作り直された「新劇場版」4部作のストーリーがある。
 この作品は物語の「分岐」があり、TV版や劇場版など媒体の差ごとにそれぞれ異なる分岐での物語が描かれている。

特徴

作品
 テレビアニメととして登場し、数々の話題を呼んだ作品だが、伏線を張りすぎて回数内に解決できないという暴挙に出たうえ、途中で予算を使い果たして最後の数回は殆どアニメではなくしてしまった。このため原作者であり総監督でもある庵野秀明は大きな批判を受けることになった。その後、現在では「旧劇場版」とされる劇場映画シリーズへと移り、第25話と第26話を完全に作り直し、物語は完結した。
 この旧世紀版を総じて見ると、第25話のところでルートが分岐し、TVシリーズは平和な終わり方でシンジは苦しみがなくシンジが望む安らぎの世界へと到達するが、作り直された旧劇場版ではもう一つのルート、世界を残酷へと導く終わり方となっている。
 そしてさらに、最初から作り直した4部作「新劇場版」とされる劇場映画シリーズが作られ、これも2021(令和3)年に無事に完結した。

TVシリーズ
 タイトルは「新世紀エヴァンゲリオン」。20世紀である1995(平成7)年10月4日から全26話で放送された。
 舞台が21世紀になってすぐであることから「新世紀」が冠されている。

旧劇場版
 TVシリーズの最後は不完全であったことから、ここで語り尽くせなかった部分を補う目的で作られた劇場映画シリーズ2作。
 この2作をもって第25話と第26話は作り直され、もってTVシリーズから続く一連の物語は完結を迎えた。

その他
 エヴァンゲリオンの原作はアニメであり、漫画ではない。たくさん存在する漫画版は、全てTVシリーズおよび旧劇場版を元にしたコミカライズ作品である。
 中でも、エヴァンゲリオンの制作に参加した貞本義行による漫画版「新世紀エヴァンゲリオン」(全14巻)や、ゲーム作品「エヴァンゲリオン2」は、本編に述べられていない設定などが追加されており、謎の多い世界観における設定の参考とすることもある。

新劇場版
 完結から10年経過後、21世紀になってから制作が始まった劇場用映画4部作となる新シリーズ。序破急は舞楽や能楽の構成形式で、「守破離」や「起承転結」などと意味が近い言葉であるため、四部作の最初の3作の題名に採用された。ただし急はQ (Quickening) に変えられている。
 新劇場版では既に「新世紀」になってしまっているため「新世紀」は題名から外され、また舞台の年代設定も「セカンドインパクトから15年後」だけになり、(既に過ぎてしまっているため)旧世紀版と異なり西暦による設定がなくなっている。設定も大幅に変わっており、使徒の順番と数が大幅に変わっているほか、旧世紀版にはあった使徒の名前は使われていない。
 「ヱヴァンゲリヲン」表記はタイトルだけで、機体としての名称は従来通り「エヴァンゲリオン」である。
 新劇場版では主要キャラであるアスカの名が惣流から式波に変えられているが、この名は海上自衛隊「あやなみ型護衛艦」の4番艦「しきなみ」から。これは、新劇場版での新キャラ真希波・マリ・イラストリアスが同「あやなみ型護衛艦」の7番艦「まきなみ」から付けられているのと同様、従来からの綾波レイともども、女性パイロットの名が「あやなみ型」同型艦で統一されたためである。

主要人物

主要EVAパイロット

碇シンジ(いかり しんじ)
 本作の主人公の少年。母ユイ、父ゲンドウの息子として生まれた。
 旧世紀版ではEVA初号機、新劇場版では初号機と第13号機のパイロットとなる、第3の少年(サードチルドレン)。14歳。
 担当声優である緒方恵美の誕生日6月6日にちなみ、旧世紀版では誕生日が2001(平成13)年6月6日に設定されている。

綾波レイ(あやなみ れい)
 本作のヒロインの一人。
 EVA零号機のパイロットで、第1の少女(ファーストチルドレン)。データ上は14歳。
 出自については謎が多いが、碇ユイの没後、エヴァ初号機に残されたユイのサルベージで得られた肉体から作られたユイのコピーとなる肉体に、第2使徒リリスの魂を入れた、いわば「リリスの魂の容器」である。
 シンエヴァのラストでは、渚カヲル(アダムの魂の容器)と恋仲になっている姿が描かれ終劇となっている。

惣流・アスカ・ラングレー(そうりゅう・あすか・らんぐれー) / 式波・アスカ・ラングレー(しきなみ・あすか・らんぐれー)
 旧世紀版では惣流、新劇場版では式波として登場する、本作のヒロインの一人。
 旧世紀版ではEVA弐号機、新劇場版では2号機および3号機のパイロットとなる、第2の少女(セカンドチルドレン)。14歳。
 シンエヴァのラストでは、好きだったが冷たく当たっていたシンジに結局フラれた上、相田ケンスケ(ケンケン)とも破局したかどうかは不明ながら上手くも行っていないようなひとりぼっち姿が描かれ終劇となっている。

真希波・マリ・イラストリアス(まきなみ・まり・いらすとりあす)
 新劇場版の「破」から新キャラとして登場した、本作のヒロインの一人。
 EVA仮設5号機、2号機、8号機のパイロット。
 シンエヴァのラストでは、碇シンジと恋仲になっている姿が描かれ終劇となっており、新キャラでありながら主人公をアスカから奪い取った勝ち組少女となった。

NERV、ヴィレ

碇ゲンドウ(いかり げんどう)
 特務機関NERV 最高司令官。ユイの夫で、シンジの実父である。旧世紀版では旧姓が六分儀(ろくぶんぎ)で、妻ユイの姓である碇姓を使用している(つまり婿入り)とされた。新劇場版ではユイの旧姓は綾波とされたため、碇姓の由来は不明となっている。
 妻ユイを溺愛しており、それはユイの没後も変わることはなかった。ユイ亡き後は赤木ナオコ、彼女の死後はその娘である赤木リツコを愛人とした(赤木親子への親子丼行為)上、「自らの計画」のために彼女たちも利用した。
 新劇場版では加持リョウジから受け取ったネブカドネザルの鍵で人であることを捨て、裏宇宙へ行くための条件を満たした。

冬月コウゾウ(ふゆつき こうぞう)
 特務機関NERV 副司令官。碇ゲンドウの理解者であり、彼の計画である「本当の目的」を知る唯一の人物である。元大学の教授で、ユイやゲンドウは彼の教え子だった。
 旧劇場版ではユイの幻影を迎え入れて補完された。新劇場版では、精神世界に留まりユイと共に人類の行く末を見届けることを決意した。マリが「この船の中、L結界密度が高すぎませんか?」としたことに冬月は「元来、友人用ではないからな。無理は承知だ。」と返したように、アンチL結界システムのない無人用の自動操縦船に無理して搭乗していたため、最後には人の姿を保てなくなりL.C.L.へと還元され死亡した。

葛城ミサト(かつらぎ みさと)
 特務機関NERV 戦術作戦部作戦局第一課所属。エヴァの戦闘指揮官。新劇場版では「Q」以降、反NERV組織ヴィレの艦艇「AAA ヴンダー」の艦長。
 担当声優である三石琴乃の誕生日12月8日にちなみ、旧世紀版では誕生日が1986(昭和61)年12月8日に設定されている。
 作中、唯一エヴァを「エバー」と呼ぶ。
 彼女はショタコンであり、碇シンジを好いているが、肉体関係はシンジから拒否された。
 TV版の終劇は触れないとして、旧劇場版では戦略自衛隊から銃撃を受けて負傷、そのままシンジをEVA初号機の元へと送り届けた後で倒れ、戦略自衛隊による区画爆破によって死亡する。新劇場版においては、人類の希望となる「ガイウスの槍」(ヴィレの槍)をシンジに渡すため艦長として一人で「AAAヴンダー」に残り特攻したことで死亡した。いずれにしても後の世には生き残れない設定の女性である。

赤木リツコ(あかぎ りつこ)
 特務機関NERV 技術開発部技術局第一課所属。エヴァンゲリオンの開発総責任者。、スーパーコンピューターシステム「MAGI」の開発者である赤木ナオコの娘であることから、「MAGI」の責任者でもある。新劇場版では「Q」以降、反NERV組織ヴィレの艦艇「AAA ヴンダー」の副長。
 母親の赤木ナオコはゲンドウの愛人だったが、娘であるリツコもゲンドウを愛し、愛人となった。

伊吹マヤ(いぶき まや)
 特務機関NERV本部オペレーターおよび技術開発部技術局一課所属で、階級は二尉。新劇場版では「Q」以降、反NERV組織ヴィレの艦艇「AAA ヴンダー」の整備長。
 赤木リツコの部下でリツコを「センパイ」と呼び慕うが、マヤはレズビアンであり、リツコを性的に愛していてゲーム版ではリツコと肉体関係がある設定となっている。

加持リョウジ(かじ りょうじ)
 特務機関NERV 特殊監査部所属のスパイ。
 担当声優である山寺宏一の誕生日6月17日にちなみ、旧世紀版では誕生日が1985(昭和60)年6月17日に設定されている。
 ゼーレがゲンドウを監視するために送り込んだスパイであるが、ゼーレからくすねてきた、旧世紀版はアダムを胎児状にしたもの、新劇場版ではネブカドネザルの鍵をゲンドウに渡すなど、ゼーレに抗う実行部隊としての活動もしている。
 旧世紀版では、ゼーレが拘束した冬月をゼーレを裏切って解放したために、ゼーレの手の者に射殺された。新劇場版では、ヴィレの支援組織「KREDIT」にいたが、具体的なことは不明ながらサードインパクトを止めるためにその爆心地に向かい、自らの命を犠牲にしてそれを止めた、とされている。
 葛城ミサトとの間に息子をもうけており、名前は同姓同名の「加持リョウジ」として「シンエヴァ」に登場する。

ゼーレ

渚カヲル(なぎさ かをる)
 旧世紀版ではEVA弐号機、新劇場版ではMark.06と第13号機ののパイロットとなる、第5の少年(フィフスチルドレン)。15歳。エヴァは14歳でないと乗れないとされているが、設定上15歳である。
 その正体は、旧世紀版では第17使徒タブリスである。新劇場版では第1の使徒だが、「Q」において第13の使徒へ堕とされた。
 旧世紀版では、誕生日は2000(平成12)年9月13日と設定されている。これはつまりセカンドインパクトの日ということである。

第壱中学校

鈴原トウジ(すずはら とうじ)
 第3新東京市立第壱中学校の2年A組で、シンジのクラスメイト。
 旧世紀版では、EVA3号機のパイロット、第4の少年(フォースチルドレン)に選ばれた。妹を良い病院に入れることを条件に受け入れるが、起動実験において寄生していた使途バルディエルによって暴走してしまい、左足を失う重傷を負った。
 新劇場版ではパイロットにはならず、「シンエヴァ」で第3村に生存者として登場した。中学校では喧嘩ばかりしていた委員長、洞木ヒカリと結婚し、娘「ツバメ」をもうけている。

相田ケンスケ(あいだ けんすけ)
 第3新東京市立第壱中学校の2年A組で、シンジのクラスメイト。
 軍事マニアであり、エヴァのパイロットになりたがったものの、搭乗員候補の一人にはなったが最終的に搭乗員にはなることができなかった。
 新劇場版では、「シンエヴァ」で第3村に生存者として登場し、何でも屋を営む。空白の14年間の間にアスカと良好な関係を築いたらしく、アスカからは「ケンケン」と愛称を付けて呼ばれ、またケンスケもアスカの全裸を見ても冷静であるなど既にそれなりの関係に至っていることを暗に示す描写がなされている。

洞木ヒカリ(ほらき ひかり)
 第3新東京市立第壱中学校の2年A組で、シンジのクラスメイトであり、かつこのクラスの学級委員長である。アスカと仲が良い。
 旧世紀版では鈴原トウジに淡い恋心を抱く描写がなされていた。
 新劇場版では鈴原トウジと結婚しており、娘「ツバメ」をもうけている。

補足

事件

ファーストインパクト
 約40億年前、地球の形成時代、テイアと呼ばれる天体が地球に衝突し大破、宇宙空間へと飛び散ったその破片が合体し月になったとするジャイアント・インパクトが、この物語におけるファーストインパクトで、作中では世界の始まりの生命体が訪れたイベントとして描かれている。
 まず「白き月」(後の第1使徒アダム、そして裏死海文書、およびロンギヌスの槍)が南極に落下し、地上の支配者となるべく使徒を産み出していた。次いで「黒き月」(後の第2使徒リリス、そして人類ふくむ全ての地球上の生物)が現在の箱根にあたる場所に落下した際に「ジャイアント・インパクト」が発生、この時にアダムほか使徒は一旦眠りにつき、そして月ができたとする。
 ファーストインパクトでアダムら使徒が眠ったなか、リリスからは「L.C.L.」すなわち生命のスープと呼ばれる液体が流れだし、地上に様々な生物、そして人類が生み出され、やがて世界に人類が繁栄した。人類は、リリスにちなみ、(知恵の実を持った)「リリン」と呼ばれる(旧世紀版のみ)。

セカンドインパクト
 旧世紀版では2000(平成12)年9月13日に起きたとされる事件・大災害で、地球人口の半分が失われた。公には大質量隕石の落下が原因であるということにされ、この影響で地軸が捻じ曲がったため日本は四季が失われ常夏となった。
 生き残った人類もこの事件を皮切りに紛争、戦争となり、その被害も甚大なものになった。その戦争の巻き添えで、当時の日本の首都だった東京も新型爆弾が投下されたことで消滅した。
 セカンドインパクトとは実際には、第1使徒アダムが使徒と接触すると起こるとされた大爆発「サードインパクト」による人類滅亡を避けるために、アダムを卵にまで還元しようと試みたところ、その際に発生したエネルギーによって大爆発が生じた結果がセカンドインパクトとされている。この事件は、結果としては裏死海文書を持ちそれに基づいた計画を遂行するゼーレによって仕組まれた人災である。

(ニア)サードインパクト

旧世紀版
 エヴァンゲリオンの基本的な流れは、ゼーレや、碇ゲンドウ・冬月コウゾウらがサードインパクトを起こすため様々な手回しをするものである。このサードインパクトは使徒の手によってではなく、準備を整えつつ人の手によって起こそうとしており、これが物語の根幹である「人類補完計画」であった。
 サードインパクトは、第2使徒リリスと他の使徒が接触することにより起こるセカンドインパクトと同等の爆発現象であり、「裏死海文書」に記載されていた人類滅亡のシナリオの最終段階である。このサードインパクトは、旧劇場版と新劇場版で設定が大きく異なる。
 旧劇場版では、神にならんとする碇ゲンドウが第1使徒アダム(の胎児)を自身の肉体に吸収、次いで第2使徒リリスの魂の容器である綾波レイとの融合を試みたが拒否されたため、シンジの元へと向かった。ここでシンジを乗せたEVA初号機を依代とし、ゼーレの意図する形でのサードインパクトが始まった。リリスから放たれたアンチA.T.フィールドにより人類は個体を保てなくなり次々と液状化(L.C.L.化)し、その魂が「黒き月」へと集まった。初号機がリリスに取り込まれ人類も一つに補完された世界、ここで物語は二つのルートへの分岐が示される。この行く先がシンジに委ねられ、シンジは、人類は単体の生命となるより個人がいる従来の世界を望み、サードインパクトは中断され終劇となった

新劇場版「破」と「Q」の間

新劇場版のラスト
 新劇場版では「破」から「Q」に至る「空白の14年間」に発生した事件が「ニアサードインパクト」とされる。
 「破」のラストで、シンジが乗ったエヴァ初号機は、まず頭に天使の輪のようなものがついた「疑似シン化第1覚醒形態」となり、その後綾波レイと第10使徒を取り込んで目が三つある「疑似シン化第2形態」となる。冬月「やはり、あの二人で初号機の覚醒は成ったな」ゲンドウ「ああ」。
 ここで「サードインパクト」が始まりガフの扉が開き(なぜか翼をくださいの曲とともに)様々なものを飲み込むシーンとなり、次いで第2使徒リリスが映し出されるが、ただ旧劇とは違いリリスには活動を抑える最終安全装置「ロンギヌスの槍」が刺さったままであるためリリスは動くことができず、なおかつスタッフロール後に登場した「Mark.06」に乗った渚カヲルが初号機のコアを「カシウスの槍」で貫き活動を停止させたことでガフの扉は閉じたため、「ニアサードインパクト」止まりとなった。

次回予告
 Qでは何も語られていないので、「破」の最後に流れた「Q」の次回予告がほぼ全ての情報となる。
 次回予告の中で一瞬、ゲンドウと冬月がラクダのような動物とともに登山をするようなシーンが映されるが、この一瞬のシーンは「アダムスの器」(後の「Mark.09」)を極秘裏に回収しているシーンではないかとする説がある。これを元に後に「Mark.09」を建造し、レイ(3人目)をパイロットとしたのが「Q」である。
 また、旧劇では加持リョウジがゲンドウに渡すのは「アダム」だが、新劇ではゼーレからくすねてきた「ネブカドネザルの鍵」である。旧劇でゲンドウは手にアダムを融合させ神にならんとしたが、新劇ではネブカドネザルの鍵を用いて神になろうとしたと考えられる。実際、カヲルはゲンドウを「リリンの王」と呼んでいる。

ドグマへと投下されるエヴァ6号機
 まず、2本目の「ロンギヌスの槍」を持った「Mark.09」が降下し、リリスが封印されている場所の近くへと行った。
 次いで、自立型(「ダミーシステム」)とし、ゲンドウらが第12の使徒を潜ませた「Mark.06」がセントラルドグマを降下した(これが次回予告のシーン)。
 「Mark.06」は、リリスに刺さっていた「ロンギヌスの槍」を抜き、これによってリリスは活動を再開する。この時に再び「サードインパクト」が起こり多くの人類は「インフェニティ」となったようだが、「アダムスの器」の力を覚醒させた「Mark.09」によりリリスは首を切り落とされ、そして「ロンギヌスの槍」が打ち込まれ再び封印された。このため「序」では磔にされていたはずのリリスが、「Q」では首がなく胴体だけ前のめりとなった姿となっている。
 この事件も、どうやらフォースインパクトではなくニアサードインパクトと呼ばれているようであるが定かではない。

フォースインパクト
 新劇場版において、不発だったニアサードインパクトから14年後に発生する事件として描かれており、これを起こすのは碇シンジである。
 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qにおいて、渚カヲルは、碇シンジと共にエヴァ第13号機に搭乗し第2使徒リリスに刺さっていると考えた「ロンギヌスの槍」と「カシウスの槍」を抜こうと考えた。ロンギヌスが世界を「破壊」し、「カシウス」で世界を「創造」するはずだった。
 しかしリリスはゲンドウらによって手が加えられた後であり、実際に刺さっているのは二本とも「ロンギヌスの槍」だったため、その異変を感じた渚カヲルは槍を抜いてはいけないと考えた。しかしシンジはカヲルの提案を受け入れず、その槍を抜いてしまったため、エヴァ「Mark.06」内に潜んでいた第12の使徒が活動を再開した。結果、エヴァ第13号機(アダムスの器)と渚カヲル(アダムスの魂)が揃い第1使徒アダム相当の存在であったところに第12使徒が接触したことから、渚カヲルがトリガーとなってサードインパクトの続きとなるフォースインパクトが発生、地下に存在した「黒き月」が発動し、黒き月のガフの扉が開いてしまった。ここまではゼーレの思惑通りということになる。
 ただ、碇ゲンドウの計画では、フォースインパクトについては成功如何は問題でなく、これに乗じて「第1使徒」の魂を「第13使徒」に「堕天」させ、リリス側の存在へと陥れることが最大の目的となっていた。この時にゲンドウが何をしたのかは定かではないが、カヲルは「さすがリリン(人類)の王、シンジ君の父親だ」と述べている。そしてエヴァ第13号機の覚醒によりカヲルの首に付けられたDSSチョーカーが発動、カヲルの首を吹き飛ばし、カヲルは死亡した。
 すなわちゲンドウは、フォースインパクトという人類滅亡の危機を、ゲンドウにとって邪魔な「ゼーレ」、そして敵対勢力「ヴィレ」の巨大戦艦「AAAヴンダー」に対する陽動作戦に用いた。そして「裏死海文書」の契約により不滅となっていた「ゼーレ」の魂も「第1使徒」を「第13使徒」にするという裏死海文書の契約にない状態にすることでゼーレを滅せうる魂に変え、もって彼らの魂が宿るシステムを停止させて「ゼーレ」の息の根を止めることに成功したわけである。

人類補完計画
 ゼーレが計画する、人類すべてを単体の生命へと還元し神の元へ回帰するという計画。このためのトリガーがサードインパクトの発動だった。
 一方、その計画を遂行するNERVの碇ゲンドウおよび冬月コウゾウはゼーレとは異なる思惑で人類補完計画を進めていた。碇ゲンドウは自身が単体の生命となり神に近い存在となることで、妻・ユイに再会しようと目論んでいたからである。
 旧世紀版ではサードインパクトは中断され人類補完計画は不発となった。新世紀版でもアディショナルインパクトは例外としてニアサードインパクトとフォースインパクトが生じているが人類補完計画は不発で終わっている。

アディショナルインパクト
 新世紀版において、裏宇宙のゴルゴダオブジェクトにおいて碇ゲンドウが起こしたインパクトがアディショナルインパクトである。
 これまでのフォースインパクトはゲンドウ曰く「人類を浄化する」ためのものだったが、アディショナルインパクトはそれらとは異なり「世界を書き換える」ためのものだとした。ゲンドウがこのインパクトと起こした目的は、言うまでもなくユイと再開するためである。
 ゲンドウはフォースインパクトの後にエヴァ第13号機でマイナス宇宙へと飛び込み、これをエヴァ初号機でシンジが追った。ここでゲンドウがゴルゴダオブジェクトに磔にされているエヴァンゲリオンイマジナリーを2本の槍で刺す際、それぞれをトリガーと贄(にえ)だとした。カヲルが以前に、ロンギヌスの槍とカシウスの槍の2本があれば世界を作り直せると述べていたことと同様である(なお、「シンエヴァ」で突如登場した用語マイナス宇宙とゴルゴダオブジェクトはウルトラマンのオマージュである)。
 しかしミサトがAAAヴンダーでシンジにガイウスの槍を届けたことで、切り札のなくなったゲンドウはユイとの再開を諦めざるを得なくなった。そこで、ゲンドウが起こしたアディショナルインパクトを引き継いだシンジは「エヴァがなくてもいい世界」を願うと、ユイが現われてゲンドウの第13号機や他のエヴァを槍で貫いていった。結果、ラストの宇部新川駅以降の世界はシンジによって書き換えられた「エヴァのない世界」となり、エヴァパイロットも存在しない世界となって終劇したのである。

舞台

神奈川県第3新東京市とジオフロント
 物語の舞台であり、特務機関NERVの本部がある場所。
 その地下にはジオフロントとされる広大な球状の空洞があり、高層ビルなどの大都市を収納し隠すことができる。
 第3新東京市のジオフロントの正体は、ファーストインパクトにおいて地球に運ばれた第2使徒リリスの卵とも言える「黒き月」そのもので、このために球状をなしている。ここは人類を含むリリス系生物の生命の魂が、生まれ、還る場所であるガフの部屋である。
 旧世紀版では地下中心部にセントラルドグマがあり、その先の最深部がターミナルドグマである。一方、新劇場版では呼称が逆転しており、地下中心部がターミナルドグマで、最深部がセントラルドグマとなっている。

南極のジオフロント
 セカンドインパクトが発生した場所。
 このジオフロントの正体は、ファーストインパクトの直前に地球に運ばれた第1使徒アダムの卵とも言える「白き月」そのもので、このために球状をなしている。ここはアダム系生物すなわち使徒の魂が、生まれ、還る場所であるガフの部屋である。

セントラルドグマ(旧世紀版)・ターミナルドグマ(新劇場版)
 第3新東京市のあるジオフロントの中心部のこと。
 NERVの様々な施設があるほか、旧世紀版におけるターミナルドグマ・新劇場版におけるセントラルドグマが存在する。

ターミナルドグマ(旧世紀版)・セントラルドグマ(新劇場版)
 第3新東京市のあるジオフロントの最深部。使徒の侵入に備え、自爆装置が設置されている。ここに、人類の祖でもある第2使徒リリスが磔にされている。
 新劇場版では、NERV本部最深部のL-EEE(レベルトリプルE)とする場所とされ、ここにロンギヌスの槍で磔にされるリリスがあり、かつミサトによりサードインパクトのトリガーであると語られている。劇中ではシンジが戦う意思を決めた場所であり、かつ「Q」後半においてシンジは第13号機に搭乗して訪れて「ロンギヌスの槍」を抜き取った場所でもある。
 新劇場版ではターミナルドグマとセントラルドグマの名が反転しており、新たにL-EEE(レベル トリプルイー)という最深部を意味する用語が登場している。

長野県第2新東京市
 セカンドインパクト後の戦争で東京が壊滅した後、政府は復興を断念し東京都を旧東京市として、旧東京に代わる新首都として遷都した。その場所は、長野県旧松本市である。
 「第二次遷都計画」後は神奈川県第3新東京市が建設された。将来的に、こちらに首都が移行される計画があった。
 セカンドインパクトでニューヨークが水没したため、国連の本部もここに置かれている。

組織

SEELE(ゼーレ)
 太古の昔より世界を操ってきたとされる秘密結社。元々は宗教団体だったが、作中では国連を動かすための隠れ蓑、そしてNERVを陰で操る存在として描かれている。
 ファーストインパクトで「白き月」でやってきた、使徒などを予言する「裏死海文書」を持ち、それに基づいた計画を遂行している。
 姿は見せず、モノリスとして描かれる。
 TVシリーズおよび旧劇場版でのシリーズでは12人で構成されている。新劇場版では7人となっているが、このシリーズでは彼らは人ではなく、人類に文明を与えた人類とは異なる生命体であり、その意識がモノリスに移植され生きている存在として描かれる。「裏死海文書」の契約により不滅の存在で、新旧どちらの世界観でもゲンドウにとっては邪魔な存在である。
 新劇場版ではQにおける終盤、ゲンドウの思惑通り裏死海文書の契約を無効にしてゼーレを不滅ではなくすことに成功した。ゼーレは、願い(サードインパクト)は全て叶ったとして満足して死を受け入れ、人類の補完と安らかな魂の浄化を願う中、ゲンドウの指示で冬月がシステムの電源を落とし全員が死亡、ゼーレの息の根を止めることに成功した。

特務機関NERV(ネルフ)
 使徒への対抗のために結成された国連直属の特務機関で、正式名称 国際連合直属非公開組織 特務機関NERV。まずGEHIRN(ゲルヒン)として結成され、サードインパクト後に後継としてNERVが設立され、MAGIの完成とともにGEHIRNは解体された。
 本部は日本国、神奈川県の第3新東京市の地下にある「黒き月」による大空洞(ジオフロント)に存在し、最高司令官は碇ゲンドウ、副司令官は冬月コウゾウである。また、世界各国に支部がある。秘密結社とはいえ、本部の存在する第3新東京市の住民には公然の秘密状態である。
 ゼーレの実質的な下部組織で、ゼーレの計画「人類補完計画」を実行するための組織であるが、当のゲンドウおよび冬月はゼーレの計画とは異なる人類補完計画を秘密裏に目論んでおり、旧劇場版では対立、新劇場版ではゲンドウらの策謀の結果ゼーレは滅ばされ、NERVはゲンドウの目的を達するための組織となる。

WILLE(ヴィレ)
 新劇場版「Q」および「シンエヴァ」において、NERV壊滅を目的とした組織。
 作中においては、綾波レイはNERV側だが、葛城ミサト、赤木リツコや式波・アスカ・ラングレーなど、碇ゲンドウに近しい人たち以外の元NERV要員は全てWILLE側にいる。

その他

MAGI(マギ)
 NERV本部などに置かれているスーパーコンピューターの名。
 本部のMAGIは、CASPER(カスパー)、MELCHIOR(メルキオール)、BALTHASAR(バルタザール)の三つで構成されている。

エヴァンゲリオン(エヴァ)
 人類が使徒と戦うために作り出した人型兵器。略称「エヴァ」。巨大ロボットのようなものであるが、実際には人造人間であるので、SFの世界ではロボットとは区別される。
 使徒と同様に「A.T.フィールド」という防御壁を持つことから使徒と対等に戦うことができ、人類がもつ使徒と戦える唯一の兵器である。
 エヴァを動かすためには「魂」が必要で、そのため何らかの人の魂がコアに入れられているが、作中で言及がないものが多い。また、零号機・初号機・2号機の3機以外は、旧世紀版と新劇場版で設定がかなり異なる。
 エヴァンゲリオンは基本的には第1使徒アダムを元に作られているが、ジンシが搭乗する初号機のみ唯一第2使徒リリスから作られている。またエヴァには人の魂が必要ということで総じて何らかの訳ありであり、初号機には接触実験で取り込まれたシンジの母親であり碇ゲンドウの妻であるユイが肉体と魂の両方が、弐号機にはアスカの母親であるキョウコの肉体と魂の両方が、入っている。
 旧世紀版は次いで3号機・4号機と量産機(5号機〜13号機)が存在する。新劇場版では設定が若干曖昧になっていて、仮設5号機であるとか、既に人型ですらないMark.04などと言ったものが多数登場する。
 エヴァは、巨大ロボットアニメのお約束と同様に人が乗り込んで操縦する。パイロットは、「インターフェイス・ヘッドセット」と呼ばれるヘルメットを被り、「プラグスーツ」と呼ばれる服を着て(綾波レイは全裸からプラグスーツを着る姿が度々描かれている)、コックピットとなるエントリープラグに乗り込み、エヴァに挿入される。その際、パイロットを保護し、また情報伝達をするために、プラグ内を「L.C.L.」で満たす。

使徒(しと)
 作中に登場する、敵として第3新東京市に襲来する生命体。使徒はチームを組むことなく、必ず単体で現われる。「A.T.フィールド」を持っているため、通常兵器による攻撃は全て届かず、意味をなさない。
 使徒もエヴァと同様に「コア」と呼ばれるものを持ち、これがその生命の根源である。エヴァの場合は人間の魂であるが、使徒の場合は「S2機関」と呼ばれるもので、使徒が体内に持つ永久機関(生命の実)である。コアが弱点で、コアを破壊することによって活動が停止する設定になっている。新劇場版ではコアの破壊によって形状維持ができなくなり、全身が赤い(血液のような)液体に変わるという描写がなされている。
 旧世紀版では第1使徒から第18使徒まであり、第1使徒がアダム、第2使徒がリリスで共に生命の起源として描かれ、TVシリーズでは第3使徒から第16使徒までが襲い掛かり、倒される。そして第17使徒タブリスが渚カヲルであるが、その魂は第1使徒アダムのものである。また、第18使徒リリンが人類であるとしている。
 新劇場版では第1の使徒から第13の使徒まであるが、第11の使徒が欠番となっており最後まで登場していない。また、人類は使徒ではない。「序」において碇ゲンドウは第6の使徒を前に「我々は残り8体の使徒を倒さねばならん」と発言している。なお、第11の使徒が欠番だが、「Q」において、第1の使徒だった渚カヲルが第13の使徒に「堕とされた」後、碇シンジの首から外し自らの首に付けたDSSチョーカーが発動して死亡した。数が合わないが、新劇場版では、これをもってリリスを除く「全12体」の使徒が倒されたとしている。

ユイの存在場所
 シンジの母であり、ゲンドウが人類を滅亡させてでも逢いたかったゲンドウの愛妻がユイである。
 ユイは2004(平成16)年(前世紀版での設定、新劇場版では年は未設定)での実験のさいにエヴァ初号機に肉体と魂の双方が融合された。
 新劇場版においては、「Q」において「破」のラストでシンジもエヴァ初号機へと融合されていたことが明らかにされた。その後、ヴィレは初号機からシンジを「検体BM-03」としてサルベージ(復活)させるが、恐らくこの時に、シンジの中にユイの肉体や魂(の一部)も取り込まれた状態で復活したと思われる。
 エヴァ初号機を愛妻ユイとみなして話しかけるシーンがゲンドウには多数存在するが、「シンエヴァ」ラストにおいてゲンドウはシンジを見て「そこにいたのか.ユイ」と語り満足するのは、シンジがユイとの愛の結晶であることもさることながら、サルベージされたシンジの中に実際にユイがいたからであろう。

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