Sleipnir
読み:スレイプニル
外語:Sleipnir

 フェンリル株式会社が開発しているWebブラウザー
目次

概要

機能・性能
 独自のレンダリングエンジンは持たず、IEコンポーネントのTridentや、Mozilla FirefoxのGeckoなどを使う、タブブラウザーである。
 多機能なブラウザーで、標準でアドレスバーと別に検索バーが用意され、マウスジェスチャー、スキン、RSSリーダー、セキュリティ切り替え等がそろっており、各機能とも細かくカスタマイズが可能。またこれら機能に加えてプラグインとして提供されている他の機能も追加することができる。
 近年は従来のWindows用以外のプラットフォームでの開発が盛んであり、iOS用、Android用、OS X用が新たに開発されている。
 

沿革
 現在に続く国産ブラウザーの老舗で、まだ柏木泰幸個人の開発だったバージョン1の最終版(1.66)の頃にすでに国内でメジャーなタブブラウザーとして認知されるようになっていた。
 ところが2004(平成16)年11月16日に柏木家に泥棒が入り、家財道具とともにソースの入ったコンピューターが盗まれてしまい、開発ができなくなってしまった。
 その後、2005(平成17)年6月13日にフェンリル株式会社を立ち上げ、新たにいちからSleipnir2の開発をはじめた。このため1系列と2系列では方向性や機能などで差がある。
 2008(平成20)年10月31日にSleipnir3の開発が発表されたが、これはまたSleipnir2とは別に、再度一から作り直されたものであるらしい。これは2011(平成23)年11月16日に正式版が発表された。
 2011(平成23)年初頭から相次いで発表された各プラットフォーム用のSleipnirを連携するサービスなども発表され、今後はクロスプラットフォームな展開がなされていくと考えられる。
 Sleipnir1系列時代から多くの賞を受賞している。

特徴
 上級者のためのブラウザーを名乗っており、高いカスタマイズ性が特徴。
 以下は主にWindows用バージョン2系列について述べる。

機能

タブブラウジング
 タブブラウザーとして高い機能を持っていて、タブブラウジングにより基本的に1つのウインドウ内で全てを完結する操作性になっている。この点で、新規ウインドウで開く動作も多い他のメジャーなブラウザーと対照的である。
 タブの大きさを指定できたり多段表示が可能とあって、数十個単位のタブを開いていても快適な利用ができる。そのせいか、初期設定では検索バーとお気に入りから開いたページは新規タブに開くなど、タブを多く作る設定になっている。

お気に入り
 IEコンポーネントブラウザーとしては珍しく、独自のお気に入りを持つ。
 複数のページをグループとして登録し、一気に開けるお気に入りグループという機能もある。
 お気に入り登録が多く、メニューが1画面の縦幅に一度に表示できない場合の表示方法として「スクロールして表示」、「階層化して表示」、「タイル上に表示」が選べる。特に「タイル上に表示」は多くのお気に入りを一度に見渡せる機能だが他のブラウザーにない独特の機能で、この機能のためにSleipnirを使っているという人もいるようである。
 このお気に入りや設定はInternet ExplorerMozilla FirefoxGoogle ChromeOperaNetscape、Lunascapeからインポートできる。

エクスプローラバー
 お気に入り一覧、履歴一覧や、RSSフィードなど他の拡張機能の一部は、IEと同様のエクスプローラ バーから参照することができる。
 この中に「ウインドウ一覧」というウインドウの親子関係をツリーで表示する機能があるが、これは「ツリーブラウザー」としての機能を十分果たすものであり、Sleipnirをツリーブラウザーとして使用することもできる。

カスタマイズ
 公式ページでは「頂点を極めたカスタマイズブラウザ」を特徴として表記しており、高い自由性を有している。
 ブラウザーの持つほぼ全機能に名前が付けられ分類されており、さらに、プラグインを用いるとその機能の中にユーザー定義の機能を追加することも可能である。
 この各機能をマウスジェスチャーやキーボードショートカットとして自由に割り当てることができる。
 さらにほとんどの右クリックメニューや、「ファイル」、「編集」などの標準メニューなども、この機能を使ってメニューエディタから任意にカスタマイズできる。
 見た目についてもスキン対応、ツールバーのボタンや各バーの配置の変更も対応していて自由度が高い。

プラグイン
 Sleipnir2から標準機能も含めて各機能は全てプラグインとして提供されており、自由に追加削除することができる。
 標準以外の追加プラグインは公式ページとその他いくつかのページで配布されている。
 有名な追加プラグインとしては次のようなものがある。

欠点
 IEコンポーネントブラウザーとしてTridentエンジンを使っていることから、その仕様上、速度と安定性、および描画性能に期待が出来ない。
 GeckoWebKitなどの比較的高速安定なレンダリングエンジンを使うほかのブラウザーと比べ、Windows版Sleipnir(1,2系列)の安定性は劣っているといえる。

開発
 個人開発だった頃から2ちゃんねるを利用してデバッグやユーザーの意見の取り入れなどを実施しており、それは企業開発となった現在でも続いている。
 評価、デバッグ用にリリースされるtest版と呼ばれるバージョンなども2ちゃんねるで公開されている。

名前
 Sleipnir(スレイプニル)とは北欧神話オーディンが乗る八本脚の魔法馬のことである。
 よく使われる略称として「プニル」がある。
 しかしそもそもが一般的な英語の読み方でなく、また公式の読み方「スレイプニル」もやや長いので、数々の誤読や異読をよんでいる。
 例として、センプニル、シュレンプナー、スリープナー、スリンパー、スネイプニル、スレイプ、スレプナー、ぷにる、にゃー、スレイプニアー、シュリンパー、すれいぷにゃー、などがあるらしい(参考:Twitter @fenrir_official)。

普及
 開発開始当時はWindows標準かつ利用の大多数を占めていたブラウザーがInternet Explorer 6であり、同じ表示のできるタブブラウザーとして数少ない選択肢だったことなどから、日本のみであるがそれなりに普及したらしい。
 現在でも国内のブラウザーシェア調査で一定して3%〜10%程度のシェアを維持しているとされる。またSleipnir1.66のデフォルトのユーザーエージェントはIEと同じなので、実数はもう少し多いとする見方もある。
 フェンリル社の発表では国内シェア9%、またユーザーのうち5%が英語版のユーザーだという。

競合製品
 主に競合するライバルは、カスタマイズ、プラグインと方向性が似ているMozilla Firefoxであるとよく指摘されている。
 Firefoxは標準ではまともな機能が殆ど入っていないため、IEより便利にするためには各人によるプラグインの導入とカスタマイズが不可欠である。対してSleipnirはデフォルトでよく使う機能が入っているので、あまり熱心にカスタマイズしなくてもそれなりに使え、初期導入の手間が少ないとされる。
 一方で標準でない多くの機能を使いたいと考えた場合には、ユーザー数が世界的に多くプラグインを導入することが一般的なFirefoxの豊富なプラグイン数にSleipnirは太刀打ちできず、そうした場合にはFirefoxしか選択肢がなくなる。

バージョン

Windows用

1.66
 発表時から、ソースを紛失するまでに開発された最終版。
 プラグイン機能はないものの、2系列と遜色ない機能を有している(ただしお気に入り、スキンなどは非互換)。
 2系列に比べると容量が小さく、機能が全部組み込みのため場合によっては軽快に動作する等の特徴を持ち、こちらを継続して使っているという愛用者も少なからずいる。
 レジストリを使用しない作りになっているので、2から提供されたようなポータブル版の別は不要である。
 基本的にまだ使えるが、次第に、開くとアプリケーション自体が落ちてしまうようなページ(主にJavaScriptに起因する)が増えてきている。
 IE8以降でもIE7互換エンジンでレンダリングされるが、レジストリを手動で変更すれば(サポートされていないが)新しいエンジンを使うことは可能。

2系列
 現在(メンテナンス程度ながらも)開発が続けられている正式版。
 1.66に比べ機能は多く自由度も高くなり、国際化対応に適した作りになるなどの改良が見られる。ただし新規開発した別アプリケーションなので、完全に機能が上位互換というわけではない。
 標準のバージョンの他に、レジストリを使わないポータブル版が提供されている。
 これを著している時点での正式最新版は2.9.8(2011(平成23)年9月8日)。

3系列 (Sleipnir3 for Windows)
 2008(平成20)年10月31日に発表された現在開発中のバージョンで、2011(平成23)年11月16日に正式版が発表された。再度、一から作り直したという。
 カスタマイズ自由なユーザーインターフェースの更なる改善や、タブグループ機能の追加、同社のファイル管理ソフトFenrirFSと提携したお気に入り機能、Fenrir Passの利用、Geckoエンジンへの正式対応、スマートフォン的な新たなUIの提案などが行なわれるとしている。
 ロードマップが示され、現在のSleipnir2の機能が全て補完されるのはバージョン3.4以降となることが予想される。フェンリルのTwitter公式アカウントでも「まだまだ未熟者」だとしており、今後のさらなる開発が待たれる。

iOS用 (Sleipnir Mobile for iPhone/iPad)
 2011(平成23)年に正式版が発表された。
 従来のWindows用と同様タブの操作に重点を置いており、その快適さが評価されている。
 無料で提供されており、App StoreからiPhone、iPadにインストールできる。

Android用 (Sleipnir Mobile for Android)
 2011(平成23)年9月15日に正式版が発表された。
 先に好評を得たiOS版と同様にタブの操作に重点を置いており、片手だけで操作できるとされている。
 無料で提供されており、Android MarketからAndroid 2.1以上にインストールできる。

Windows Phone用 (Sleipnir Mobile for Windows Phone)
 iOS、Android用の成功を受けて発表された。執筆現在(2011(平成23)年11月18日)ベータ版。
 Android用の片手操作を引き継ぎ、専用の便利なスタートページなども開発された。
 無料で提供されており、MarketplaceからWindows Phone 7.5 以上にインストールできる。

Mac OS X用 (Sleipnir3 for Mac)
 Sleipnir Mobile for Macとして2011(平成23)年に開発が発表された。2011(平成23)年11月2日に正式版が発表された。
 Macに合わせたデザイン、操作性を重視しており、Windows版とはまた異なる外観、操作性になっている。
 無料で提供されており、Mac OS X 10.6以上にインストールできる。

ポータブル版
 Sleipnir2とSleipnir3 for WindowsをそれぞれUSBメモリーなどに入れて使えるようにしたバージョン。各正式版と同時にリリースされている。
 設定保存にレジストリを使わず、ファイルサイズの低減、履歴の消去機能デフォルト化などのポータブル使用に即したチューニングも施されている。

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