PC/AT互換機
読み:ピースィーエイティーごかんき
外語:PC/AT Compatible machine

 1984(昭和59)年にIBMが発売したパソコンPC/ATの互換機のこと。現在のパソコンは、殆どがこの「PC/AT互換機」だとされているが、実際には欺瞞に満ちた表現である。
目次

概要
 IBMは、PC/ATのハードウェア仕様の多くを公開した。
 これにより、多くのメーカーが互換機を製造するようになり、世界的に、パソコンといえばPC/AT互換機、という状況を作り出した。
 当時のキラーソフトウェアは、表計算ソフトウェアLotus 1-2-3であり、このソフトウェアを業務で使うためにPC/AT互換機を会社に導入、という事例も多かった。

特徴

普及
 英語圏等では、PC/AT互換機に、PC DOSまたはMS-DOSという環境で広く使われた。これで困ることは殆ど無かったからである。
 日本では漢字等の都合があり、長くPC-9800シリーズの独壇場となっていた。しかし価格が高かった為、CPU性能向上に伴い漢字表示はソフトウェア化され、Microsoft Windowsの普及と共にPC/AT互換機へと置き換わっていった。
 英語圏でも、パソコンは二大潮流があり、対するはMacintoshであった。こちらは長く、Motorolaのマイクロプロセッサー(Motorola 68000シリーズ)を用いていたが、後にPowerPCを採用した。現在のOS X搭載Intel Macでは遂にPC/AT互換機となり、都合、CPUアーキテクチャーは二度も変わったことになる。
 かくして、特殊なものを除いては、PC/AT互換機は世界のパソコンの標準と化したのである。

仕様
 基本仕様はPC/ATを踏襲するが、実際に普及した仕様は、純正のPC/ATよりも少し性能が高い。
 80286以上のCPUは前提条件だが、ディスプレイアダプターはEGAではなく、VGA(640×480)以上が一般的となっている。
 時代の変遷を経て、ハードウェアもかなり様変わりしている。今も「PC/AT互換機」と根強く呼ばれているが、既にPC/ATとの共通部分は殆どなく、実際の互換性は無いに等しい。
 日本では、DOS/Vの頃に「OADG仕様」という名が使われたが、全く普及しなかった。

共通性
 PC/ATと、2015(平成27)年時点のいわゆる「PC/AT互換機」は、殆ど全ての件について差がある。
CPUやアーキテクチャ
 x86という意味では共通だが、それだけである。
 DOSが動けば、PC/AT時代のソフトウェアが使える可能性はある。
フォームファクター
 フォームファクターは、PC/ATがATやBaby-ATなのに対し、現在の主流はATXである。
 ATXの基板面積はBaby-ATに近いが、配置が全く異なる為ケースは流用できない。
メモリー
 メモリーは、PC/ATがDIPDRAMで最大512Kiバイトが使われた。
 最近では1Giバイト〜64Giバイトと量は桁違いで、メモリーチップもDDR4 SDRAMである。
拡張スロット
 拡張スロットも、PC/ATはATバス(ISA)だが、現在はPCI Expressである。
ディスプレイ
 ディスプレイは、PC/ATはDB15(D-sub 15ピン)によるアナログ出力でCRTを使った。
 現在はHDMIDisplayPort、少し古い環境ではDVI-D液晶ディスプレイに接続している。
キーボードマウス
 キーボードは、PC/AT用は84キーボードでATコネクターによる。互換機ではPS/2コネクターを経て、現在はUSBによる接続である。
 マウスは、PC/AT用はシリアルポートに繋げた。互換機ではキーボードと同様にPS/2コネクターを経て、現在はやはりUSBによる接続である。
フロッピーディスクドライブ
 フロッピーディスクドライブは、PC/ATでは2HDに対応した。
 しかし、フロッピーは今や使われていない。代替の媒体は、USBメモリーなどである。
ハードディスクドライブ
 ハードディスクはPC/ATはST-506インターフェイスを使っていた。
 互換機ではESDIATAを経て、今はシリアルATAである。
拡張ポート
 拡張ポートは、PC/ATではRS-232Cパラレルポートがあったが、今はUSBIEEE 1394などを使う。
 ネットワーク機能はPC/ATには無かったが、今や1Gbps程度のEthernetが普通に標準搭載されている。
 つまり、今のマシンでは、PC/AT時代のCPU、メモリー、拡張カード、ディスプレイ、キーボード、フロッピーディスク、ハードディスクと、何一つとして流用することができない。ハードウェアの互換性はゼロである。
 また、ソフトウェアの互換性についても怪しい。DOSが動けばコンソールプログラム程度は動作するだろうが、グラフィックを操作するアプリケーションが正常動作するかどうかは、かなり疑問である。
 これが「互換機」なのだとされている。

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