SARS-CoV-2 N蛋白
読み:さーず-ころなういるす-つー-ぬくれおかぷしど-たんぱく
外語:SARS-CoV-2 Nucleocapsid protein
SARS-CoV-2(武漢肺炎ウイルス)が持つ蛋白の一つ。N蛋白のNはヌクレオカプシドを意味し「ヌクレオカプシド蛋白」と呼ばれることも多い。抗原として考えると「N抗原」とも呼ばれる。
概要
SARS-CoV-2(武漢肺炎ウイルス)がもつゲノム(オリジナルのものは29,903塩基対)のうち、終止コドンを含む28274..29533の範囲(遺伝子長1260、アミノ酸長420)から作られる蛋白質である。
これは、SARS-CoV-2を包む皮のように存在する脂質二重膜(エンベロープ)の内部にウイルスのゲノムRNAとともに存在する。対し、ウイルス粒子表面に存在するもので良く知られるのはS蛋白である。
特徴
機能
コロナウイルスのN蛋白はRNA合成時に必要となる。
これがRNAに結合し、その二次構造の形成や解消を促進する。つまりRNAシャペロンとしての活性すなわちRNAの構造変化を制御する機能を有しているとされる。
毒性
N蛋白(ヌクレオカプシド蛋白)は神経症状の原因となる可能性が示唆されている。
武漢肺炎(いわゆる新型コロナ)に感染すると、ウイルスそのものではなくウイルス粒子内部に存在するこのN蛋白(N抗原)が血液脳関門を通過し脳脊髄液中に流入し、それが炎症を惹起し、神経症状を来す可能性を示唆する、という論文が存在する。
研究では、脳脊髄液のN抗原陽性は脳脊髄液のネオプテリンやインターフェロンγといった炎症マーカーと有意に相関し、神経症状がある感染者では神経症状がない感染者より脳脊髄液の炎症マーカーが有意に高値だった、とする。
ワクチン
N蛋白(N抗原)はウイルス感染、または全粒子の不活化ワクチンで生じるが、S蛋白(S抗原)のみを用いているmRNAワクチンや組換えタンパクワクチン、ウイルスベクターワクチンでは生じない。
日本で承認されているワクチンは、これを著している時点で全てN蛋白(N抗原)の心配はない。だが日本においても武漢肺炎に感染してしまえばN蛋白(N抗原)の害を受けることになる。
ワクチンを接種していれば、万一感染しても免疫によりウイルスは攻撃され体内増殖は抑えられるためN蛋白(N抗原)の曝露量も抑えられるが、ノーワクチンでウイルスに感染してしまうと体内でウイルスの増殖を止められないためN蛋白(N抗原)の害をもろに受けることになる。
複数回感染
これを著している時点ではまだ確立しておらず、「査読前」の論文で可能性を示唆する段階だが、複数回感染で重症化する可能性を示唆する報告がある。
SARS-CoV-2への再感染は、その回数が増すごとに重症化率が高まる可能性があるとしている。その原因については今後確定すると思われるが、複数回感染のN蛋白(N抗原)起因のADEが一つの可能性としてある。
また、SARS-CoV-2感染により獲得される抗N抗体(ワクチンでは獲得しない)は再感染で重症度と相関するIL-6が誘導される一方、抗S抗体(ワクチンで獲得)では誘導されにくい、とする報告がある。
結論としては、SARS-CoV-2には何があっても感染したら駄目、ということである。ワクチン接種で被害は大幅に防ぐことができる一方、感染するとAEDなどを生じる可能性が高い。
ワクチンとN抗体
感染自体は許容し重症化を防止するというコンセプトであれば、ワクチンとしてN蛋白を標的にすることも不可能ではない。しかし上述のように、N蛋白はそれ自体に神経症状の原因となる可能性があり、さらに抗体依存性感染増強(AED)の原因にもなるため、ワクチンでN蛋白を量産してしまうと副反応でAEDを引き起こしてしまう可能性が高い。
かつてSARSのためのワクチン開発時点でこの問題は知られており、これがSARSのワクチンを実用化できなかった理由の一つとなっている(SARSが自然消滅したためワクチン開発の必要性が薄れたことも理由ではある)。
この経緯により、武漢肺炎ウイルスSARS-CoV-2のワクチン開発では、最初からS抗原のみを標的に絞ったワクチン開発に力を入れた。実用化されたmRNAワクチンでは、この甲斐あって膨大な数が接種されつつも、AEDは1例も報告されていない。
感染増強
これを著している時点ではまだプレプリントかつin vitro(試験管内研究)、かつデルタ変異というケースだが、抗N抗体によって感染増強が起きるという報告が複数ある。
一方、臨床的・疫学的に、ワクチンによる感染増強が一貫性を持って証明された事例は未だに存在しない。
SARS-CoV-2感染症において、N蛋白(N抗原)およびこれにより誘導される抗N抗体が非常に有毒有害であることから、ワクチンで誘導される抗S抗体よりも感染で誘導される抗N抗体の方がリスクが高いと考えられる。
あるかも分からないワクチンによる「感染増強」を懸念するより、感染による重症化をワクチンで予防する方が合理的な判断であると言える。
アミノ酸配列
終止コドンを含む28274..29533の範囲(遺伝子長1260、アミノ酸長420)から作られる、遺伝子Nのアミノ酸配列は次の通りである。これは支那の武漢市で検出されたオリジナルのSARS-CoV-2(いわゆる武漢株、Wuhan-Hu-1)のもので、他の株は概ねどこかが変異している。末端の終止コドンは略し、実際の419アミノ酸長を記す。
ORIGIN
1 MSDNGPQNQR NAPRITFGGP SDSTGSNQNG ERSGARSKQR RPQGLPNNTA SWFTALTQHG
61 KEDLKFPRGQ GVPINTNSSP DDQIGYYRRA TRRIRGGDGK MKDLSPRWYF YYLGTGPEAG
121 LPYGANKDGI IWVATEGALN TPKDHIGTRN PANNAAIVLQ LPQGTTLPKG FYAEGSRGGS
181 QASSRSSSRS RNSSRNSTPG SSRGTSPARM AGNGGDAALA LLLLDRLNQL ESKMSGKGQQ
241 QQGQTVTKKS AAEASKKPRQ KRTATKAYNV TQAFGRRGPE QTQGNFGDQE LIRQGTDYKH
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