N-IIロケット
読み:エントゥーロケット
外語:N-II rocket

 宇宙開発事業団(NASDA; 後のJAXAの前身)により開発された実用衛星打ち上げ用液体燃料大型ロケット。
 N-Iの後継であり、大幅な打ち上げ能力の向上を実現させたもの。これは衛星の大型化時代に対応する必要に迫れてのことだったが、当時はまだ国産技術の不足もあり、N-Iロケット以上にデルタロケットの技術導入となり、国産技術の導入は更に低下している。これは科学研究用衛星打ち上げのためにロケットを自主開発し実績を積み重ねてきた宇宙科学研究所(ISAS)とは違い、まず商用衛星の打ち上げ成功ありきだったNASDAとの方針の違いによるものだった。
 第一段エンジンはN-Iと同じMB3-3型エンジンであり、推進薬タンクを延長した。また固体補助ロケットを3本から9本に増やして推力を強化した。
 第二段には国産だったLE-3に代えて再着火可能な推進系、エアロジェット社のライセンス生産品(製造は石川島播磨重工業)のAJ10-118FJエンジンが採用された。当時はLE-3の後継としてLE-4も開発中だったが、不採用となり日の目を見ることはなかった。不採用の理由は分からないが、性能か政治的な理由かの、いずれかであろうと思われる。
 第三段はより大型の固体モータ、日産自動車がライセンス製造したStar-37E型固体ロケットエンジンを採用し、静止衛星打ち上げ能力を約350kgに高めた。
 N-Iと同様にデルタロケットの技術を用い、またアメリカの「ブラック・ボックス」な慣性誘導方式を採用するなど、米国の技術がふんだんに導入されている。この方針は国策だったが、現場の技術者が皆納得していたわけではない。この現場の屈辱感が、後の国産H-Iロケット、純国産H-IIロケット実現へと繋がって行くのである。
 1976(昭和51)年から本格的に開発が始まり、1981(昭和56)年に試験機の打ち上げに成功した。全8回の打ち上げで、全て成功している。
 打ち上げられた衛星は、技術試験衛星IV型 "きく3号"、静止気象衛星2号 "ひまわり2号"、静止気象衛星3号 "ひまわり3号"、通信衛星2号 "さくら2号a"、"さくら2号b"、放送衛星2号 "ゆり2号a"、"ゆり2号b"、海洋観測衛星1号 "もも1号" である。

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