GPS
読み:ジーピーエス
外語:GPS: Global Positioning System
汎地球測位システム。アメリカによる、
人工衛星
を用いた測位システム(
GNSS
)のこと。
目次
概要
特徴
技術
日時
電波
測位符号
携帯機器への搭載
補足
利用の制限
軍用での問題
問題点
概要
1970年代に
アメリカ国防総省
により打ち上げられたナブスター(NAVSTAR)という航法衛星を使用し、現在位置を測定するもの。
米国が120億ドルの経費を掛けて開発したもので、高度20,200kmの6つの軌道上に24機(うち3機は予備)の衛星が配置されており、地球上の何処からでも常に4機以上の衛星信号が受信できるように配置されている。
特徴
技術
人工衛星には高精度な原子時計(
セシウム
原子時計と
ルビジウム
原子時計が各2個)が搭載されている。
地上で実際に位置を確認するためには、各衛星からの時間信号の電波を受信し、またそれぞれ衛星からの所要時間を求め、その距離の計算を行なうことが必要である。
衛星と地上の距離は約20,200kmなので、電波が到達するには約1/15秒かかる。GPS端末機器と衛星の位置関係の判断手段は、衛星から端末までの信号の到達に要した時間から直線距離を割り出すようになっていて、複数の衛星からの距離を同心円で探っていくと現在位置が出てくる仕組みになっている。
3次元位置を求めるためにはx,y,z(
緯度
・
経度
・高度の3座標)とt(時間)を得る必要があり、最低4個の衛星からの情報が必要になる。高度を必要としない2次元位置でよいなら最低3個の衛星からの情報が必要になる。
日時
GPS衛星で扱っている日時の扱いは特殊で、単純な年月日ではない。これは1980(昭和55)年1月6日09:00
(JST)
(@041)にUTCに同期して開始されており、時刻は「
GPS時間
(GPS Time)」、日付は「GPS週(GPS Week)」という。
GPS時は、GPSの原子時計が刻む正確な時刻である。各GPS週の始点から1ずつ増え、週が変わると再び0に戻る。なお、国際原子時(TAI)が導入している
閏秒
の補正を採用していないため、起点が実際の時刻より遅れている(開始時点で19秒の遅れ、現在は30秒以上の遅れあり)。
GPS週は、UTCに同期して開始された時からの積算週である。この情報は10ビットであり、つまり2
10
=1024週でループする。0から始まり1023まであり、次は再び0に戻る。
GPS始まって以来、初の0に戻った日時は、1999(平成11)年8月22日09:00
(JST)
(@041)である。この時、単純な引き算だけで計算をしているような古い機種では衛星から端末までの正常な所要時間(距離)の算出が出来なくなり、結果として誤動作してしまった。当日の22日は日曜日だったが、この問題のために古いGPS利用者からのクレームの電話がメーカーに殺到したと言われている。
電波
測位符号は「C/Aコード」(Coarse/Acquisition code)と「Pコード」(Precision code)の二種類があるが、Pコードは秘匿操作(AS=Anti Spoofing)によりYコードに変換されて送信されている。
古典的な民生用のGPS信号は、L1帯とL2帯の二つの波長を
搬送波
として使用している。
L1帯(1575.42MHz) ‐ C/Aコード、Pコード(Yコード)、航法メッセージの3種類の情報が含まれる
L2帯(1227.60MHz) ‐ 当初はPコード(Yコード)のみ、その後民生利用可能な信号L2Cが混合されるようになった
L3帯
L4帯
L5帯(1176.45MHz) ‐ 民生利用可能な信号の3番目
PコードがL1/L2双方のバンドに含まれているのは、同時に2波を受信して、電離層等での誤差をなくすためである。
Pコードは符号化された航法信号がクロックレート10.2Mbpsの
スペクトラム拡散
方式で変調されており、C/Aコードもクロックレート1.023Mbpsで同様の変調が掛かっている。
測位符号
基準周波数=10.23MHz - 0.00455Hz(軌道上の重力に対応した相対論補正)
C/Aコード ‐ 1.023Mcps (cps=チップレート≒bps)
Pコード(Yコード) ‐ 1.023Mcps
航法メッセージ ‐ 50bps
サブフレーム ‐ 300bit = 6s
メインフレーム ‐ 1500bit = 30s
5サブフレーム=1メインフレーム
25メインフレーム=1マスターフレーム
携帯機器への搭載
GPS受信機は、腕時計や
携帯電話機
、
スマートフォン
など、様々な機器に搭載されるようになった。
従来のGPSは消費電力が多く腕時計でもソーラー腕時計への搭載は困難であったが、これを最初に実現したのはセイコーの「セイコー アストロン」だった。セイコーエプソンが、消費電力を5分の1に削減した省電力GPSモジュールを開発したことから実現したという。
補足
利用の制限
GPSは本来は軍事用衛星であるため、利用には制限が存在する。
GPSから送信される信号には、もともと他国が軍事目的のために利用できないようにするため、SA(selective availability)という方法で故意に誤差が混ぜられていた。
これは米国時間で2000(平成12)年5月1日に突然解除されたが、それ以前では保証される精度は2drms(root-mean-square: 放射状測位誤差の自乗平均)で100m程度といわれていて、軍事用の1/10程度の精度となっていた。
本来は軍用であったが、民間の発想力も手伝い、自動車、船舶や航空機の位置測定を手始めとして、地殻変動や地震予知など幅広く利用されるようになった。
誤差も、
DGPS
や
キネマティックGPS
といった手段を講じることによって10m以下が実現できるようになった。これらの技術は信号を直接用いるのではなく、搬送波の位相を計測する事により高精度の測位を行なっている。
軍用での問題
本来の軍用としては、部隊の位置測定だけでなく、巡航ミサイルや誘導爆弾などの攻撃兵器の位置誘導などに使われている。
米軍は当然軍用電波を使用しているが、他国でも民間用電波を利用して軍事利用することが可能で、これが問題となっている。
民間用電波にはノイズを混ぜて精度を低下させることも出来るが、それで精度が100mから300mになったところで、例えば慣性誘導のみに頼っていれば数十km程度の誤差が出ることもある以上、充分に実用水準である。加えて、GPS誘導を中間誘導に使用し、終端誘導を別に用意していれば、民間用電波利用でも軍用電波利用でも殆ど無関係となる。
更に、
DGPS
などの技術を併用すれば、FM放送が受信できる場所などの制限は受けるものの誤差1m程度の高精度を得ることが可能で、終端誘導すら必要ない。
米国防総省とGPSを共同運用している米運輸省は2005(平成17)年から民間用電波を二つ追加するが、そのうちの一つを使えば従来からある電波との比較によって精度は3m〜10mに向上してしまうというジレンマがある。こうなると、ますます敵性国の利用を阻害することが難しくなる。
問題点
軍事面での問題点に危惧を抱いた米国防総省は紛争地域での民間用電波発信を停止することも検討したが、ロシアのGPS衛星であるグロナス(GLONASS)を使用されてしまえば終わりである上に、民間利用が一般化してしまったことから下手に停止することも出来なくなってしまっている。
このGPSには根本的な問題がある。GPS用衛星にも寿命(約7.5年)があり、寿命が尽きたものに関しては新衛星を打ち上げねばならないが、この費用は現在全てアメリカが負担している。
GPSを全世界的に利用するには、まずこれらの課題を解決しなければならない。日本では、
準天頂衛星システム
として自腹で同目的の衛星を打ち上げる計画である。
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