一重項酸素
読み:いちじゅうこう-さんそ
外語:singlet oxygen

 励起された酸素原子の一つ。
 酸素原子(O)は陽子を8個持つ。従って電子は通常8個存在する。この電子はK殻に2個、L殻に6個存在するが、L殻は電子が8個の状態で安定する。言い替えれば酸素原子は電子が2個足りない状態ということである。
 そこで、酸素原子は二個の原子同士でL殻の電子2個を共有し、二重結合をすることで、見かけ上安定となる。この状態を酸素分子といい、O2と表現する。
 通常の安定な状態(基底状態)の酸素は、各電子は原子核に最も近い軌道を回り、そして同じスピンの不対電子を2個もつビラジカルと呼ばれる状態になっている。この状態の酸素は全ての電子のスピン量子数の合計が1になり、三重項状態、すなわち "三重項酸素" と呼ばれる状態である。
 この基底状態の酸素に紫外線などのエネルギーが加わった時、原子は励起されて、電子はより外側の電子軌道を回るようになる。酸素の場合、不対電子の1つが励起され、スピンの向きが反対になり、もう一つの不対電子と対を作ることでスピンを互いにうち消し合い、励起状態でありながら全電子のスピン量子数が0の "一重項状態" となる。
 この状態は高エネルギーでかつ不安定なため、他の原子と容易に電子の受け渡しをする。ゆえに反応性が高く、いわゆる活性酸素の一つとされる。
 この励起状態から基底状態に戻るには、1.27μmの蛍光を発する。

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