シスAB型
読み:シス-エイビーがた
外語:blood type cis AB

 ABO式血液型の表現型のうち、AB型の亜型の一つ。10万人に1人の割合で存在するとされる。
目次

概要

シス
 通常のAB型をトランスAB型(trans=反対側)と言うのに対して、通常ではないこの血液型はシスAB型(cis=同じ側)という。
 シス型(cis)・トランス型(trans)とは、本来は二重結合などの化学構造を表わすために使われる表現だが、これが流用されている。但し、シスAB型とトランスAB型は、結合が反対側か同じ側かとは無関係な命名であり、特に深い意味はないものと思われる。
 具体的なことについては後述する。

問題点
 この血液型を持つ人の子は時にABO式でありえない血液型を持って生まれ、親子鑑定の訴訟にまで発展することがあるため、不定期に注目が集まる。
 しかし、シスAB型は特殊なので、親子で特殊な組み合わせがあっても、何ら不思議ではない。
 なお、シスAB型かどうかは、遺伝子を解析しないと正確には判断できない。遺伝子解析は、かなりお金が掛かる。

遺伝子
 人間のABO式血液型は、9番染色体上の遺伝子によって決定される。二組ある遺伝子上のそれぞれに、遺伝子は通常一つのみ(A、BまたはO)が乗る。
 
 しかしAとBの両方の遺伝子が同一染色体上に乗る、より正確にはAとBの両方の遺伝子の中間的な塩基配列を持った、言うなれば「AB型遺伝子」を持つ人が稀にあり、このような血液型はシスAB型と呼ばれる。
 

特徴

活性
 このAB型遺伝子はA型遺伝子と比較して若干の変異が見られ、A型とB型の両方の糖をH抗原に付加できる中間的な酵素を作り、生成する転換酵素構造中にA型だけでなくB型の物質も付加することができる。
 またA抗原・B抗原ともに活性は弱い。
 シスAB型の親の子は、もう片方の親の血液型が仮にO型であっても、シスAB型となることがある。

親子の血液型
 一方がシスAB型確定で、もう一方は通常かシスAB型か不明という状況での親子の血液型関係は、次のようになる。
 遺伝子は一対で二本あるため、シスAB型の親については、その組み合わせごとに表とした。
 シスAB型の親
cis-AB/Acis-AB/Bcis-AB/Ocis-AB/cis-AB
その配偶者AAB、AAB*、BAB、A、OAB
BAB*、AAB、BAB、B、OAB
OAB、AAB、BABOAB
ABA/BAB*、AAB*、BAB、A、BAB
cis-AB/AAB、AAB*AB、AAB
cis-AB/BAB*AB、BAB、BAB
cis-AB/OAB、AAB、BAB、OAB
cis-AB/cis-ABABABABAB
 強調したものは、通常のAB型での交配ではありえない血液型である。
 *が付いたAB型は、通常のAB型と、シスAB型の両方がありうることを示す。

補足
 AB×Oで子供の血液型が矛盾するからといっても、必ずしもAB型の親がシスAB型であるとは限らない。
 親のうちO型の方も、実はA型やB型だがAx型のように弱い型で、通常の凝集反応での検査では判断が付かずO型と誤診されている、ということもあるからである。
 他にも、親子関係で血液型が合わなくなる条件は存在する。

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