色覚異常
読み:しきかくいじょう
外語:color blindness

 に対する識別能が正常色覚と比して低下している病態。色盲色弱などの症状の総称。
目次

概要
 正常者には違って見える色の違いを小さくしか感じられない症状で、結果として色の違いの判別が困難となる。
 多くの場合、色を感じるための三種類の錐体細胞(「赤錐体」「緑錐体」「青錐体」)の一つ以上が欠損するか、または機能が不十分な時に生じる。
 先天性と後天性とがあり、先天性の場合は遺伝病であるため有効な治療法はないが、後天性であれば原因を除去することで症状が改善することはある。

特徴

定義
 人間の場合、光を感じるのに、暗いところで機能する杆体(かんたい)、明るいところで機能する錐体(すいたい)とに分けられる。
 錐体は、更に色を見分けるための色素細胞により3種類()に分けられ、それらが一つ以上欠損しているものを色盲、欠損はしていないが機能に異常があるものを色弱という。
 この色盲・色弱を総称して色覚異常という。

呼称の変化
 従来は「色盲」と呼ばれた。「盲」という字から、色が全くわからない、全てが白黒で見える、という誤解を招いていた。実際は異なり、赤味や緑味が感じ取れないというだけで、色の判別は可能であり、また彩度は問題なく感じ取れる。
 このため現在は「色覚異常」「色覚障害」という直接的な表現で呼ばれるようになった。但し、「色覚異常」「色覚障害」という表現は、色盲の他に色弱なども含む広い表現である。
 更に時は流れ、「異常」という表現を嫌う風潮から「色覚多様性」などという代替表現が提案されているが、これは全く普及していない。
 なお、眼科用語については、日本眼科学会が2005(平成17)年に用語を更新しており、現在では新しい表現が使われている。

病態
 色覚異常者は、正常者とは異なる独特の色空間を持っているため、次の区別が付きにくい。
 独特の色空間の色覚から、次のような例がよく見られる。

分類

一覧
 古くは、全てを欠損していると杆体一色型色覚(全色盲)、三つのうち二つを欠損し一つしか機能していないものを1色型色覚と呼んだが、現在はいずれも「1色覚」という。発生は稀である。
 多くの場合は三つのうち一つのみ欠損し二つしか機能していない2色覚(dichromatism)「色盲」か、三つのうち一つのみが異常でそれが不完全にしか機能していない3色覚「色弱」とに分けられる。
名称旧名称錐体杆体
1色覚全色盲杆体一色型色覚(全色盲)×××
1色型赤錐体1色型色覚××
緑錐体1色型色覚××
青錐体1色型色覚××
2色覚1型2色覚2色型2色型第1色覚(赤色盲、P型色覚)×
2型2色覚2色型第2色覚(緑色盲、D型色覚)×
3型2色覚2色型第3色覚(青色盲、T型色覚)×
3色覚正常色覚3色型正常3色型色覚
1型3色覚3色型第1色覚(赤色弱、P型色弱)
2型3色覚3色型第2色覚(緑色弱、D型色弱)
3型3色覚3色型第3色覚(青色弱、T型色弱)

2色覚
 3色のうち、2色が正常で、1色に異常があるもの。古くは2色型色覚と呼ばれた。
 赤(1型色覚)、緑(2型色覚)、青(3型色覚)の各色覚については、遺伝子に変異があることが知られている。
 S/M/Lはshort/middle/longを意味し、波長を表わしている。
 赤と緑は、X染色体による伴性遺伝であり、主として男性が発病する。女性は発現しなくても1/2の保因者となり、その女性が子供を産めば、その子は1/2の確率で、男児なら色覚異常を発現、女児なら保因者になることになる。
 青と杆体は常染色体であるため、出現頻度は低く、また男女差もない。
 この症状では、1型色覚では赤を少し暗く感じ、2型色覚では緑を灰色っぽく感じることになる。

1色覚(全色盲)
 錐体細胞を全く持たないか、あるいは一つしか持たない場合を1色覚といい、中でも錐体細胞を全く持たず桿体細胞のみに視覚を委ねる形となるものを古くは全色盲と呼んだ。赤/緑/青全ての錐体を欠損していることから、全ての色の区別が付かない。
 また桿体細胞は、正常であれば暗い場所で光を感知するために使われるものであり、1色覚では視力が大幅に低下する。問題は網膜に存在することから眼鏡などによる矯正もできず、また明るすぎる場所では更に視力が低下するためサングラス等が必要になる。
 この症状については遺伝的要因のみならず、他の病気との併発により生じると考えられている。このため、この症例は一般の色覚異常とは区別される。

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