魔法数 (原子核)
読み:まほうすう
外語:magic number
原子核が、特に安定化する陽子と中性子の個数のこと。
概要
核種の組成は陽子数Zと中性子数Nで定義されている。原子核は原子の電子との関係と同様に殻構造を持っており、陽子や中性子がある一定の数のときに閉殻構造となって原子核は安定化する。この数を魔法数と呼ぶ。
この魔法数は古くから、2、8、20、28、50、82、126の7つが知られており、この次の数は184と予測されている。
陽子または中性子がこの数になる核種は魔法核と呼ばれる。原子番号がこの数になるものは他の周辺の元素と比して数多くの安定同位体を持ち、中性子数がこの数になる核種もまた同様である。
特徴
証明
1949(昭和24)年、マリア・ゲッパート=メイヤーとヨハネス・ハンス・イェンゼンが大きなスピン軌道相互作用を導入して魔法数を理論的に説明し、1963(昭和38)年にノーベル物理学賞を受賞した。
二重魔法
陽子数Zと中性子数Nが共に魔法数となる核種は「二重魔法」(doubly magic)と呼ばれ、それが安定核種であるとは限らないが結合エネルギーが大きいために周辺の核種よりも崩壊に対し安定していることが多い。
公知の二重魔法の同位体に次のようなものがある。11同位体のうち、安定核種は4同位体である。
- ヘリウム
- ヘリウム4 ‐ 4He (Z=2、N=2) (※安定核種)
- ヘリウム10 ‐ 10He (Z=2、N=8)
- 酸素
- 酸素16 ‐ sup{sup{16};O (Z=8、N=8) (※安定核種)
- カルシウム
- カルシウム40 ‐ sup{sup{40};Ca (Z=20、N=20) (※安定核種)
- カルシウム48 ‐ sup{sup{48};Ca (Z=20、N=28)
- ニッケル
- ニッケル48 ‐ sup{sup{48};Ca (Z=28、N=20)
- ニッケル56 ‐ sup{sup{56};Ca (Z=28、N=28)
- ニッケル78 ‐ sup{sup{48};Ca (Z=28、N=50)
- 錫
- 錫100 ‐ 100Sn (Z=50、N=50)
- 錫132 ‐ 132Sn (Z=50、N=82)
- 鉛
- 鉛208 ‐ 208Pb (Z=82、N=126) (※安定核種)
ヘリウム4は宇宙で最も豊富かつ安定した原子核の一つであり、また鉛208は最も重い安定核種である。
錫は安定同位体が10種類と全元素中で最大で、確認されている同位体核種の幅も広いが、二重魔法の錫100と錫132はそれぞれ不安定な核種ではあるものの、これよりり小さい質量数および大きい質量数の核種は安定性が急激に低下するため、その境界となる核種であるとも言える。
逆転の島
中性子過剰核、特に中性子数が陽子数よりも多いような原子核では、既知の魔法数のうち8、20、28が消え、代わりに別の魔法数6、16、32、34が出現することが研究から報告されている。こういった現象は「魔法数異常」と呼ばれている。
横軸を中性子数、縦軸を陽子数で表わす原子核の地図を「核図表」というが、この魔法数が消失した原子核群は核図表において「逆転の島」(Island of inversion)と呼ばれており、逆転の島内にある核種は既存の魔法数で考えると安定核となる核種も不安定核となる。中でも28Fは非束縛核と呼ばれていて、その基底状態が逆転の島の証拠を示す侵入状態である。
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