電子雲
読み:でんしうん
電子は原子の周りを回っているのと同時に、電子殻(でんしかく)の半径相当の周辺に雲のようにぼんやりと漂って止まっていると考えることができる。これが電子雲である。
概要
つまり電子殻に電子が入っている状態とは、電子殻の半径付近に電子雲が漂って止まっている状態、と言い換えることができる。
これは、電子は光(光子)などと同じく粒子性と波動性を持っているためである。
電子の軌道
軌道
量子論により、電子は、波長の整数倍が円周と一致する軌道にしか存在できない。
つまり円周の長さが、波長に一致する軌道、波長の2倍に一致する軌道、波長の3倍の一致する軌道、などである。それ以外の場所には、いかなる場合でも電子は存在しない。従って、電子の軌道は飛び飛びの不連続となる。
また、軌道中のどこに電子が発見されるかは偶然に支配されており、正確に予測することはできない。ただし、ある点における存在確率を知ることはできる。
基底状態、励起状態
電子は光子を吸収しエネルギーを得たり、逆にエネルギーを失って光子を放出することで、軌道間を行き来する。これをエネルギー準位という。
電子は通常は最もエネルギーの低い基底状態にあるが、外部より来た光子を吸収するとエネルギーを得、そのエネルギーでより上のエネルギーの軌道に移動する。この状態を励起状態という。
なお、軌道を変える場合、その軌道間は「ジャンプ」をする。決して、ある軌道から隣の軌道に向けて、螺旋を描くように移動するわけではない。量子論は、中途半端な値を許さないのが特徴である。
エネルギー
電子が吸収するのは、軌道のエネルギー差に相当するエネルギーを持った光子だけである。それ以外の光子は吸収しない。
そして、励起状態は電子の一時的な興奮状態であり、やがて電子は基底状態に戻ろうとする。この時、軌道のエネルギー差に相当するエネルギーを持った光子を放出する。
前述のように、軌道は決まっているので、従って軌道間のエネルギー差も決まっている。
軌道と殻
電子雲は常に特定の形を持ち、次のような軌道がある(このうち高校ではs/p/d軌道が学習対象)。
電子雲の一つの軌道には、最大で2個までの電子が入ることができる(パウリの排他原理)。
これらを組み合わせて、量子数順に次のような電子殻を作る(電子殻は中学から学ぶ)。
- K殻
- L殻
- M殻
- N殻
- O殻
- P殻
- Q殻
周期表
周期表は左から2列、10列、6列の各ブロックに別けられ、それぞれがs軌道、d軌道、p軌道の定員に対応し、ランタノイドとアクチノイドがf軌道に相当する。
また、この順はエネルギー準位にも一致し、この順に電子が充填されている状態を基底状態という(但し3dより4sの方が安定、といった(見た目の)逆転はしばしば起きる)。これはエネルギー準位的に最も安定しているが、同じ軌道に電子が2個入ると電子間の反発が強まりエネルギー的に高い状態になってしまうので、通常電子はできるだけ散らばって配置している。つまり、「不対電子が最大になるのが安定」(Hundの第1則)となる。
充填殻と半充填殻が安定
なお、前述の3dと4sの逆転はHundの第1則の例外の「充填殻と半充填殻が安定」というもので、エネルギー的に4s<3dであるが、CrとCuにおいては4s軌道の電子を1個減らして3d軌道を半充填(3d5)ないし充填(3d10)の状態が安定なため、4s軌道の電子が1個3d軌道へと「貸し出し」されているのである。
Sc〜Zn原子の電子配置表
CrとCuに注目
| K | L | M | N | O | P | Q |
|1s |2s 2p|3s 3p 3d|4s 4p 4d 4f|5s 5p 5d 5f|6s 6p 6d|7s 7p|
-------+---+-----+--------+-----------+-----------+--------+-----+
21 Sc | 2 | 2 6 | 2 6 1 | 2 | | | |
22 Ti | 2 | 2 6 | 2 6 2 | 2 | | | |
23 V | 2 | 2 6 | 2 6 3 | 2 | | | |
24 #Cr#| 2 | 2 6 | 2 6 5 | 1 | | | |
25 Mn | 2 | 2 6 | 2 6 5 | 2 | | | |
26 Fe | 2 | 2 6 | 2 6 6 | 2 | | | |
27 Co | 2 | 2 6 | 2 6 7 | 2 | | | |
28 Ni | 2 | 2 6 | 2 6 8 | 2 | | | |
29 #Cu#| 2 | 2 6 | 2 6 10 | 1 | | | |
30 Zn | 2 | 2 6 | 2 6 10 | 2 | | | |
-------+---+-----+--------+-----------+-----------+--------+-----+
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