チェレンコフ光
読み:チェレンコフこう
外語:Chelenkov Effect
荷電粒子の速度が、その物質における光速度より速い場合に光が出る現象「チェレンコフ放射」にて生じる光のこと。
概要
原子炉などで、炉心がある原子炉圧力容器の蓋を開けて中を覗くと、原子炉が稼働中であってもなくても(註: 稼働中は開けてはいけません)、水底に沈む原子炉あたりから青白い光が出ているのを確認できる。これがチェレンコフ光である。使用済み核燃料の貯蔵庫のプールなどでも拝む事ができる。
ガラスや水のような透明な物質中を荷電粒子が通過する際、それが光速度を超えた場合に、通過する荷電粒子が作る電磁場の作用で物質から青い電磁波、つまりチェレンコフ光が放出される。
特徴
現象
光速度を超えるというと誤解を招きそうだが、確かに光速よりも速いものは存在しないものの、これは「真空の場合」という条件がある。
水中や空気中では、それらの分子が障害物になり、理論上は物質の屈折率で割った値まで減速されてしまう。
常に振動する分子障害物による遮蔽はランダムなので、時々その物質中での光速を越える速度で通過する場合も発生することになる。
ν>C/n (ν=粒子速度、C=真空中の光速、n=物質の屈折率、C/n=その透明物質中の光速度)
この時に光を放射し減速するが、その光の事をチェレンコフ光という。光速を超える量が多いほど、また速度が速いほど明るくなる。
発見
この現象は、1934(昭和9)年に旧ソ連の物理学者パーヴェル・アレクセーヴィッチ・チェレンコフ(Павел Алексеевич Черенков;Pavel Alekseyevich Cherenkov)によって発見されたため、この名がある。
後の1937(昭和12)年、同じく旧ソ連の物理学者、イリヤ・ミハイロヴィッチ・フランク(Илья Михайлович Франк;Ilya Mikhailovich Frank)と、イゴール・エフゲニエヴィッチ・タム(Игорь Евгеньевич Тамм、Igor Yevgenyevich Tamm)らにより論理的に解明された。
この功績により、三人は1958(昭和33)年のノーベル物理学賞を受賞した。
注意
ちなみに核分裂反応で該当する原因となる粒子とは高エネルギーのβ線や熱中性子線であり、原子炉外などでこれが目視できる程明るくなるということは、それなりにヤバイということである。
こういった水の無い場所で見られる場合のチェレンコフ光というのは、実は自分の目の中で発生しているのである。
典型的なチェレンコフ光の波長は390nm(紫外線)とされている。
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