大日本帝国憲法
読み:だいにほんていこくけんぽう
外語:the Constitution of Great Japan empire
大日本帝国の憲法。「大日本帝國憲法」。日本の最高法規範。全7章、全76条で、立憲君主制と
民主主義
を定めた近代憲法である。
目次
情報
概要
由来
欠陥
悪用
特徴
臣民の義務
天皇
構成
条文
情報
通称: 憲法、旧憲法、明治憲法
番号: なし
効力: 現行法だが失効中 (詳細後述)
種類: 憲法
関連する法律:
日本国憲法
現行憲法とされる
日本国憲法
はこの憲法違反であるため無効。法的にはいまも有効な憲法は大日本帝国憲法だが、GHQに占領された後に新政府が樹立し新憲法を定めたため、事実上の失効状態となっている。
概要
由来
この憲法は、世界でも先駆けとなる近代的憲法である。そのため、下敷きとなる他国の憲法が殆ど無い状態で作られたことから、不備が多い。岩倉具視の提案により、概ねドイツのプロイセン憲法が参考となっている。
日本は立憲君主制であること、日本の元首は
天皇
であることを明確に書いていることは、今使われている日本国憲法より優れた点である。
欠陥
基本的には、日本国憲法と大差なく、当時としてはよく出来た憲法であった。しかし、色々と不備がある。
例えば、この憲法には帝国議会(帝國議會)と司法について規定はあっても、内閣の規定が無い。
一応、三権分立の考え方が取り入れられていて、立法権を帝国議会に、行政権を各国務大臣に、司法権を
裁判所
に、という体裁を取ったが、「
内閣
」および「総理大臣」の規定が無く、つまり「首相」が定められていない。
行政権については、あくまで天皇陛下の意向を取り入れたいという意図の現われであった。これが、この憲法の特徴的なところであり、かつ最後には軍に悪用されるという欠陥でもあった。
悪用
「
内閣
が無い」を分かり易く言うと、「政府」は名目だけで実権がないということである。
この結果、軍は「天皇に直属する」という名目で、政治に口出しすることの出来ない天皇陛下の名を悪用し、政府に逆らって好き勝手を始めるという不敬千万なことを始めたため、収拾が付かなくなった。これが、
大東亜戦争
で日本が負けてしまった理由の一つである。
それでも、明治、大正の時代までは、実際に憲法を作った者たちが存命だったこともあり問題は無かった。ただ、この憲法はついに一度も改正されることがなく、この問題点の修正がなされぬまま昭和に入り、結果として軍の暴走を止めることができなくなったのである。
特徴
臣民の義務
この憲法において、
臣民
に対して「
義務
」としているものは三つある。
兵役の義務 (大日本帝国憲法第20条)
納税の義務 (大日本帝国憲法第21条)
教育の義務 (
教育勅語
)
憲法上は義務は実は二つしか無く、教育の義務については後に明治天皇が教育勅語を渙発することで臣民の義務となった。
天皇
それまでの天皇というのは、そもそも国の柱であった。長い歴史の中では、政治に近いこともあり、また遠いこともあった。
大日本帝国憲法というのは、立憲君主制を定める。従って、君主である天皇の意思は、憲法などによって制約を受けることになり、つまり天皇陛下の力を削ぐことになる。
明治天皇はこの大日本帝国憲法を受け入れ立憲君主となり、以降は天皇が政治に直接関与することはなくなった。それこそ江戸時代には来襲する黒船に何の対抗も出来ない弱小国だった日本だが、帝国議会により国民皆兵の富国強兵政策が導入され、やがて世界の列強と戦えるまでの強国となったのである。
構成
第一章(第1〜17条) 天皇
大日本帝国憲法第1条 (天皇主権)
大日本帝国憲法第2条 (皇位の継承)
大日本帝国憲法第3条 (天皇神聖)
大日本帝国憲法第4条 (皇元首と統治大権)
大日本帝国憲法第5条 (天皇の立法大権)
大日本帝国憲法第6条
大日本帝国憲法第7条 (帝国議会の招集開会閉会停会、衆議院の解散)
大日本帝国憲法第8条
大日本帝国憲法第9条
大日本帝国憲法第10条 (官制大権と任官大権)
大日本帝国憲法第11条 (統帥大権)
大日本帝国憲法第12条 (編制大権)
大日本帝国憲法第13条 (外交大権)
大日本帝国憲法第14条 (戒厳大権)
大日本帝国憲法第15条 (天皇の栄典の授与)
大日本帝国憲法第16条 (天皇の大赦、特赦、減刑、復権の命令)
大日本帝国憲法第17条 (摂政)
第二章(第18〜32条) 臣民権利義務
大日本帝国憲法第18条 (日本臣民の要件)
大日本帝国憲法第19条 (公務に就く自由)
大日本帝国憲法第20条 (兵役の義務)
大日本帝国憲法第21条 (納税の義務)
大日本帝国憲法第22条 (居住、移転の自由)
大日本帝国憲法第23条 (罪刑法定主義)
大日本帝国憲法第24条 (裁判を受ける権利)
大日本帝国憲法第25条 (住居不可侵に関する保障)
大日本帝国憲法第26条 (検閲の禁止)
大日本帝国憲法第27条 (財産権)
大日本帝国憲法第28条 (信教の自由)
大日本帝国憲法第29条 (言論、出版、集会、結社の自由)
大日本帝国憲法第30条 (請願権)
大日本帝国憲法第31条 (非常大権)
大日本帝国憲法第32条 (軍人への準用)
第三章(第33〜54条) 帝国議会
大日本帝国憲法第33条 (二院制)
大日本帝国憲法第34条 (貴族院の議員の構成)
大日本帝国憲法第35条 (衆議院の議員の公選)
大日本帝国憲法第36条 (両議院議員兼職の禁止)
大日本帝国憲法第37条
大日本帝国憲法第38条 (法律案の議決)
大日本帝国憲法第39条 (否決法案の扱い)
大日本帝国憲法第40条
大日本帝国憲法第41条 (常会)
大日本帝国憲法第42条 (会期の延長)
大日本帝国憲法第43条 (臨時会)
大日本帝国憲法第44条
大日本帝国憲法第45条 (衆議院の解散)
大日本帝国憲法第46条 (定足数)
大日本帝国憲法第47条 (表決)
大日本帝国憲法第48条 (会議の公開、秘密会)
大日本帝国憲法第49条 (
上奏
)
大日本帝国憲法第50条
大日本帝国憲法第51条
大日本帝国憲法第52条 (議員の発言・表決の無責任)
大日本帝国憲法第53条 (議員の不逮捕特権)
大日本帝国憲法第54条 (国務大臣の議院出席)
第四章(第55〜56条) 国務大臣と枢密顧問
大日本帝国憲法第55条 (国務大臣の
輔弼
)
大日本帝国憲法第56条
第五章(第57〜61条) 司法
第六章(第62〜72条) 会計
第七章(第73〜76条) 補則
大日本帝国憲法第73条 (憲法改正)
大日本帝国憲法第74条 (皇室典範の改正)
条文
原文はいわゆる旧字体で書かれている。以下に掲示する文章は、それらをJIS X 0208の範囲内に変更したものである。
第一章 天皇
第一條
大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス
第二條
皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ繼承ス
第三條
天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス
第四條
天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ
第五條
天皇ハ帝國議會ノ協贊ヲ以テ立法權ヲ行フ
第六條
天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス
第七條
天皇ハ帝國議會ヲ召集シ其ノ開會閉會停會及衆議院ノ解散ヲ命ス
第八條
天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル爲緊急ノ必要ニ由リ帝國議會閉會ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ發ス
此ノ勅令ハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出スヘシ若議會ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ將來ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ
第九條
天皇ハ法律ヲ執行スル爲ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ増進スル爲ニ必要ナル命令ヲ發シ又ハ發セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ變更スルコトヲ得ス
第十條
天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ條項ニ依ル
第十一條
天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
第十二條
天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム
第十三條
天皇ハ戰ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ條約ヲ締結ス
第十四條
天皇ハ戒嚴ヲ宣告ス
戒嚴ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條
天皇ハ爵位勳章及其ノ他ノ榮典ヲ授與ス
第十六條
天皇ハ大赦特赦減刑及復權ヲ命ス
第十七條
攝政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル
攝政ハ天皇ノ名ニ於テ大權ヲ行フ
第二章 臣民權利義務
第十八條
日本臣民タルノ要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第十九條
日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ應シ均ク文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得
第二十條
日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ從ヒ兵役ノ義務ヲ有ス
第二十一條
日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ納税ノ義務ヲ有ス
第二十二條
日本臣民ハ法律ノ範圍内ニ於テ居住及移轉ノ自由ヲ有ス
第二十三條
日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問處罰ヲ受クルコトナシ
第二十四條
日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ權ヲ奪ハルヽコトナシ
第二十五條
日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ許諾ナクシテ住所ニ侵入セラレ及搜索セラルヽコトナシ
第二十六條
日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ祕密ヲ侵サルヽコトナシ
第二十七條
日本臣民ハ其ノ所有權ヲ侵サルヽコトナシ
公益ノ爲必要ナル處分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第二十八條
日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第二十九條
日本臣民ハ法律ノ範圍内ニ於テ言論著作印行集會及結社ノ自由ヲ有ス
第三十條
日本臣民ハ相當ノ敬禮ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ從ヒ請願ヲ爲スコトヲ得
第三十一條
本章ニ掲ケタル條規ハ戰時又ハ國家事變ノ場合ニ於テ天皇大權ノ施行ヲ妨クルコトナシ
第三十二條
本章ニ掲ケタル條規ハ陸海軍ノ法令又ハ紀律ニ牴觸セサルモノニ限リ軍人ニ準行ス
第三章 帝國議會
第三十三條
帝國議會ハ貴族院衆議院ノ兩院ヲ以テ成立ス
第三十四條
貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第三十五條
衆議院ハ選擧法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第三十六條
何人モ同時ニ兩議院ノ議員タルコトヲ得ス
第三十七條
凡テ法律ハ帝國議會ノ協贊ヲ經ルヲ要ス
第三十八條
兩議院ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各々法律案ヲ提出スルコトヲ得
第三十九條
兩議院ノ一ニ於テ否決シタル法律案ハ同會期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス
第四十條
兩議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件ニ付各々其ノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ得但シ其ノ採納ヲ得サルモノハ同會期中ニ於テ再ヒ建議スルコトヲ得ス
第四十一條
帝國議會ハ毎年之ヲ召集ス
第四十二條
帝國議會ハ三箇月ヲ以テ會期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ
第四十三條
臨時緊急ノ必要アル場合ニ於テ常會ノ外臨時會ヲ召集スヘシ
臨時會ノ會期ヲ定ムルハ勅命ニ依ル
第四十四條
帝國議會ノ開會閉會會期ノ延長及停會ハ兩院同時ニ之ヲ行フヘシ
衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ貴族院ハ同時ニ停會セラルヘシ
第四十五條
衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅命ヲ以テ新ニ議員ヲ選擧セシメ解散ノ日ヨリ五箇月以内ニ之ヲ召集スヘシ
第四十六條
兩議院ハ各々其ノ總議員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第四十七條
兩議院ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第四十八條
兩議院ノ會議ハ公開ス但シ政府ノ要求又ハ其ノ院ノ決議ニ依リ祕密會ト爲スコトヲ得
第四十九條
兩議院ハ各々天皇ニ上奏スルコトヲ得
第五十條
兩議院ハ臣民ヨリ呈出スル請願書ヲ受クルコトヲ得
第五十一條
兩議院ハ此ノ憲法及議院法ニ掲クルモノヽ外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得
第五十二條
兩議院ノ議員ハ議院ニ於テ發言シタル意見及表決ニ付院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ但シ議員自ラ其ノ言論ヲ演説刊行筆記又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公布シタルトキハ一般ノ法律ニ依リ處分セラルヘシ
第五十三條
兩議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ内亂外患ニ關ル罪ヲ除ク外會期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮捕セラルヽコトナシ
第五十四條
國務大臣及政府委員ハ何時タリトモ各議院ニ出席シ及發言スルコトヲ得
第四章 國務大臣及樞密顧問
第五十五條
國務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
凡テ法律勅令其ノ他國務ニ關ル詔勅ハ國務大臣ノ副署ヲ要ス
第五十六條
樞密顧問ハ樞密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ應ヘ重要ノ國務ヲ審議ス
第五章 司法
第五十七條
司法權ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ
裁判所
之ヲ行フ
裁判所ノ構成ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第五十八條
裁判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ具フル者ヲ以テ之ニ任ス
裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ處分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルヽコトナシ
懲戒ノ條規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第五十九條
裁判ノ對審判決ハ之ヲ公開ス但シ安寧秩序又ハ風俗ヲ害スルノ虞アルトキハ法律ニ依リ又ハ裁判所ノ決議ヲ以テ對審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得
第六十條
特別裁判所ノ管轄ニ屬スヘキモノハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一條
行政官廳ノ違法處分ニ由リ權利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ニシテ別ニ法律ヲ以テ定メタル行政裁判所ノ裁判ニ屬スヘキモノハ司法裁判所ニ於テ受理スルノ限ニ在ラス
第六章 會計
第六十二條
新ニ租税ヲ課シ及税率ヲ變更スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
但シ報償ニ屬スル行政上ノ手數料及其ノ他ノ收納金ハ前項ノ限ニ在ラス
國債ヲ起シ及豫算ニ定メタルモノヲ除ク外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スハ帝國議會ノ協贊ヲ經ヘシ
第六十三條
現行ノ租税ハ更ニ法律ヲ以テ之ヲ改メサル限ハ舊ニ依リ之ヲ徴收ス
第六十四條
國家ノ歳出歳入ハ毎年豫算ヲ以テ帝國議會ノ協贊ヲ經ヘシ
豫算ノ款項ニ超過シ又ハ豫算ノ外ニ生シタル支出アルトキハ後日帝國議會ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第六十五條
豫算ハ前ニ衆議院ニ提出スヘシ
第六十六條
皇室經費ハ現在ノ定額ニ依リ毎年國庫ヨリ之ヲ支出シ將來増額ヲ要スル場合ヲ除ク外帝國議會ノ協贊ヲ要セス
第六十七條
憲法上ノ大權ニ基ツケル既定ノ歳出及法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ屬スル歳出ハ政府ノ同意ナクシテ帝國議會之ヲ廢除シ又ハ削減スルコトヲ得ス
第六十八條
特別ノ須要ニ因リ政府ハ豫メ年限ヲ定メ繼續費トシテ帝國議會ノ協贊ヲ求ムルコトヲ得
第六十九條
避クヘカラサル豫算ノ不足ヲ補フ爲ニ又ハ豫算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル爲ニ豫備費ヲ設クヘシ
第七十條
公共ノ安全ヲ保持スル爲緊急ノ需用アル場合ニ於テ内外ノ情形ニ因リ政府ハ帝國議會ヲ召集スルコト能ハサルトキハ勅令ニ依リ財政上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第七十一條
帝國議會ニ於テ豫算ヲ議定セス又ハ豫算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ前年度ノ豫算ヲ施行スヘシ
第七十二條
國家ノ歳出歳入ノ決算ハ會計檢査院之ヲ檢査確定シ政府ハ其ノ檢査報告ト倶ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
會計檢査院ノ組織及職權ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第七章 補則
第七十三條
將來此ノ憲法ノ條項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝國議會ノ議ニ付スヘシ
此ノ場合ニ於テ兩議院ハ各々其ノ總員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多數ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第七十四條
皇室典範ノ改正ハ帝國議會ノ議ヲ經ルヲ要セス
皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ條規ヲ變更スルコトヲ得ス
第七十五條
憲法及皇室典範ハ攝政ヲ置クノ間之ヲ變更スルコトヲ得ス
第七十六條
法律規則命令又ハ何等ノ名稱ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ總テ遵由ノ効力ヲ有ス
歳出上政府ノ義務ニ係ル現在ノ契約又ハ命令ハ總テ第六十七條ノ例ニ依ル
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