折田先生像
読み:おりたせんせいぞう
外語:the statue of Prof. Orita

 京都大学の風物詩。毎年2月、受験シーズンになると出現する像。
目次

概要

由来
 元々「折田先生像」とは、京都大学の前身の一つだった旧制第三高等学校の初代校長、折田彦市(おりた ひこいち)の偉業を称えるべく作られた銅像を言った。
 これが京都大学構内に設置されていたが、折田彦市が標榜した「自由の学風」の意思を継いだ優秀なる京大生により「派手な落書き」や「オブジェ化」が進行した。
 いつしか、折田先生像というものは落書きされているのが当然という状態となるに至り、ついに大学当局側は本物は撤去するという最終手段に打って出た。
 建前上は、総合人間学部棟の建て替えのため撤去とされており、2001(平成13)年頃には工事も本格化、銅像が建っていた総合人間学部棟前は実際に、工事のため立ち入り禁止となった。だがしかし、工事終了後も本物の像が戻ることはなかった。

その後
 その後、毎年2月25日前後(入試期間前後)に、かつての像を模倣して作られたオブジェが置かれるようになった。これが、今で言う折田先生像である。但し、その姿は折田先生とは全く異なるものである。
 また像の横には、かつて「この像を汚さないで」として掲げられた立て看板を模した像の説明が毎度置かれるのも恒例となっている。
 長く作り続けている団体?の作品の場合、看板の裏側にはアイドル写真が貼り付けられるのが恒例だが、それ以外の団体?の作品の場合は異なるものが貼られることもある。
 いすれにせよ、折田彦市が夢見た自由な学風は確かに実現されていたのである

曾孫
 大学当局側がラクガキに耐えかねて本物は撤去して10年以上経った2012(平成24)年、朝日新聞の取材に対して折田彦市の曾孫は「折田一族は全員落書きや現状を知っているが、誰も怒っていない(意訳)」と回答したという。
 折田先生の子孫の方々はかなり寛大なようである。もっとも、天国にいる折田先生本人がどう思っているかは定かではない。

特徴

景観
 東大路通から東一条通を東に入り、少々歩くと、南(右手側)に、吉田南構内の正門が見える。
 正門の向こうは、吉田南総合館などがある。それは何気ない、いつもの景色である。はずだった。
 
 吉田南1号館と総合人間学部棟の間には広場があり、ベンチが置かれている。
 そこに、何か場違いな空気を漂わせる像が。
 
 なるほど、これは確かに、どこから見ても在りし日の折田先生像に他ならない。

展覧
 犯人は、毎年熱心に作っている人(たち?)の他に、時々参戦する別の人(たち?)も混ざる。このため、年によっては複数の「折田先生像」が建ち並ぶこともある。
 2011(平成23)年は、本家が「Mr. CONTAC」だったのに対し、それに一足早く別グループによる作「にせほるん先生」が登場した。
 「にせほるん先生」とは何であるのか全く定かではないが、やはりクオリティの差は本家と歴然としており、人気は本家に負けてしまった。看板裏も、本家はアイドル写真だが、こちら「にせほるん」の看板裏は二次元の萌えキャラの絵などが貼られていた。

犯人は?
 特に犯罪行為というわけでもないので犯人という呼び方もおかしいが、この犯行に及んでいるのは、おそらく元京大生だろう。しかし、「自由の学風」の意思を継いだ優秀なる元京大生の正体は、未だ明らかになっていない。
 作品の特徴から、毎年恒例の首謀者は女性説が囁かれている。
 毎年同じ頃の深夜に設置に現われ、しかも出来た物を置いてすぐ逃げるわけではなく、設置にはやはり一時間程度を要するようであるので、見張っていれば彼らの姿を拝めるのは確実であった。しかし、正体を暴いてしまうと翌年以降の楽しみがなくなってしまう恐れがあるため、みんな見てみない振りをしていたっぽい。これまでは。

中継問題と「エビフライ像」
 今や、何でもネット中継されるご時世、2014(平成26)年2月25日未明に設置された「キョロちゃん」については、ネットでの中継がなされたようである。
 しかし「いつの間にか現われる」というコンセプトの、この銅像の設置現場を中継するとなると、この銅像のコンセプトも変わってきてしまうため今後の継続が難しくなる可能性もある。いつもの作者も飽きてやめてしまう可能性もある。
 そこで2014(平成26)年の時は、折田先生像の近くに、第三者により目立つオブジェとして「エビフライ像」とともに注意書きが置かれた。これはエビのぬいぐるみないし抱き枕と思われる。看板を模したものには、次のように書かれていた。
 エビフライは 人気メニューとして美味しさの向上に尽力し、子供たちの笑顔を守るために多大な功績を残した揚げ物です。折田先生像の設置風景を真夜中にweb上で実況しないで下さい。
 水産学部
 京都大学に水産学部などは存在しないが、これは重大な警告とも言える。さらに、「私信:「報道系サークル」さまへ」とした紙も貼られていた。確かに報道も結構だが、事後報道するくらいに留めるべきなのだろう。

停学問題
 長期にわたり設置に成功している本家は今のところ(現場では正体バレバレのはずだが)特に罪に問われることもなく、ただ大学当局は速やかな撤去で観覧の妨害をする方向性で対応しているようである。
 一方、2019(平成31)年2月25日に設置された「オルガ団長像」(止まるんじゃねぇぞ)については大学当局側も強行な姿勢を示した。設置した現役の理学部4年生N氏は自主的に撤去したが、しかし「オルガ像を建てた罪」で停学処分とするとしたため、自由の学風を標榜した折田彦市の意思にも反するとして大きな騒動となった。
 ただこの設置者の場合、入試2日目(2019(平成31)年2月26日)に現場で大声で叫ぶなどし、受験生の邪魔になるから静かにするよう説得した職員の通告を無視して歌まで歌い出したことが特に重く見られたようである。
 ちなみに撤去された像は、その翌日には平成のように「鉄華」と掲げた「オルガ団長像」(恐らく同じものを一晩で改造したもの)として再び出現したという。
 いずれにしても、中継などを介して設置者が当局側にバレてしまうと後々設置者に被害が及びそこで伝統も途絶えてしまう危険がある。

湊総長像
 2020(令和2)年7月、京都大学総長選挙が行なわれ、新たな総長として湊長博が選出された。
 名字が「湊」であったことから、京大生の中から「湊あくあを京大総長に」という声が上がった。湊あくあとはバーチャルYouTuber(VTuber)として活躍する配信者である。これが切っ掛けとなってか、次のお披露目の日(?)となる2021(令和3)年2月25日、「湊総長像」として「湊あくあ」の像が登場した。なお、京大には京都大学バーチャルYouTuber同好会という同好会があるが、無関係としており、その作者については折田先生像と同様に不明である。
 更に翌年の2021(令和3)年3月25日には二体目の湊総長像として、同じくVTuberの「不破湊」の像が登場した。
 総長本人がどう思っているのかは定かではない。

その他のオブジェ
 令和に入ってからは明らかに「参加者」が増えて様々なものが設置されるようになり、とても賑やかになっている。
 ただ像は作るのも運ぶのも設置するのも大変なこともあり、それ以外のオブジェで楽しませようという作品出品者(?)もいる。
 2022(令和4)年には「← 東京大学 369km」なる緑色の道案内が設置されていたようだ。なおここは京大で、京大の入試の日である。しかも「369km」は富士山やら何やらガン無視の直線距離であるが、京大入試にとって最も必要のない情報でしかないあたりもお笑いの要素かもしれない。

沿革
 主として、吉田南構内正門付近に出現する。

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