S端子
読み:エスたんし
外語:S Connector

 S-VHSと共に登場したY/C分離(セパレート)映像信号端子のこと。コネクター部の色の規定はないが、通常「黒色」になっている。
目次

概要
 S端子のSはSeparateの意であるが、SpecialやSuperなどの意味も込められていると言われる。S-VHSとのゴロ合わせとも言われており、そのため正式名称としては単に「S」だけとなっている。
 基本的には民生規格であるが、S-VHSの業務用編集機などにも機械的構造を改善し、固定出来るようにするなどで採用されている。
 民生機の場合には4端子のminiDINで、固定構造は無い。

特徴

コネクター
 民生機用S端子は4ピンのminiDINである。丸い中に、上に2本、下に2本、更に下に四角があるが、四角は端子ではない。
 プラグ(ケーブル)を見て、四角の右上が1、その左が2、1の上が3、2の上が4である。
 各ピンの機能は次の通り。
  1. GND ‐ Y用グラウンド
  2. GND ‐ C用グラウンド
  3. Y ‐ 輝度信号
  4. C ‐ 色度信号
 NTSCなどのコンポジット映像信号を単純にY/C分離した状態で送る機能のみを持っている。

Y/C分離
 ビデオデッキは輝度信号(Y)と色度信号(C)を分離して記録しているため、それをいちいち合成してコンポジット映像信号にし、テレビ側で再びY/C分離する、これまでの不都合点を回避するために設けられた。
 特に、高解像度となるS-VHSでは、テレビに映すだけでもY/C分離による色度信号のドット妨害が生じるため、画像の品位が低下することを抑えるための重要な対策の一つでもあった。

LD
 元々輝度信号(Y)と色度信号(C)を分離せずに記録しているレーザーディスク(LD)では、この端子の存在は重要ではなかった。
 テレビ側でY/C分離するか、レーザーディスクプレイヤーでするかの違いのみしか無かったからである。
 但しPIONEER LD-X1などのように、内部的に信号処理を分離して行なうような高級機種では意味があった。

機能
 コンポジット映像端子と違い、ドット障害やクロスカラー障害が起こりづらいという利点があるが、S端子により解像度そのものが向上するわけではない。
 VTR間でダビングを繰り返すと画質が低下するが、その点に関しての有効性が高い。

拡張規格
 S端子の拡張仕様に、S1とS2と呼ばれるものがある。
 ワイド映像のうち、スクイーズ信号対応に拡張されたものがS1映像出力端子、加えてレターボックス信号対応に拡張されたものがS2映像出力端子である。

状況

制限
 S端子は元々地上波アナログ放送用のものである。
 従って、525i(480i)、つまり標準テレビ(SDTV)のインタレースにしか使うことができない。D端子でいえばD1端子相当であり、将来性はない。

末期
 地上デジタル放送対応の新型テレビが続々登場した。比較的大きなテレビでは、デジタル入力はHDMIで数系統、このほかにアナログ入力が数系統、というのが一般化した。
 アナログ入力は排他利用で、全系統にコンポジット映像端子、数系統にD端子、という状況が一般化し、S端子は一つしか付いていないようなものもある。
 例えばある製品では、HDMI×3、コンポジット×3、D5端子×2、S端子×1、アナログRGB×1、というような構成になっており、S端子は完全にオマケ扱いである。
 この状況を見ると、D端子やS端子はコンポジット映像端子よりも先に絶滅しそうな勢いである。

不人気
 S端子は繋ぎにくいことから人気がなかった。
 丸い形状で、角度を合わせて差し込まないとならないが、これが分かりにくいからである。手探りで差し込もうとしてもまず成功せず、高確率で端子を痛めた。
 コンポジットは差し込む向きを気にしなくて済むため、この点だけは他のあらゆる端子に勝っていたとも言える。

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