イリジウム
読み:イリジウム
外語:IRIDIUM

 Motorolaの提唱により設立されたIridium LLCによって実現され、現在はIridium Satelite LLCによって事業中の、衛星携帯電話およびポケットベル(ページャー)サービス。
目次

概要
 低軌道周回衛星(LEOS)を使い、全世界を圏内とする携帯電話である。
 TDMA方式を採用し、通話の他にデータ通信も対応。速度は最大で2400bpsである。
 空さえ見えれば世界中どこでも使えるが、政治的事情から使えない国もいくつかある。

特徴

衛星
 衛星軌道高度は780km。各衛星は、一機あたり半径4,400kmの範囲をカバーする。
 当初は77機の人工衛星を使う計画だったので、原子番号77のイリジウム(Iridium)からその名を採ったが、最終的には地球上の6つの極軌道(楕円軌道)にそれぞれ11機、計66基の周回衛星を配置する事になった。
 その他、各軌道毎に1機ずつ計6機の予備衛星が待機しているため、総計で72機の衛星を使用していることになり、更に追加で幾つかの衛星が打ち上げられている。
 なお、2009(平成21)年2月10日にシベリア上空でロシアの通信衛星が衝突し、大量のスペースデブリが発生した、と報じられた。状況から、イリジウムの衛星1機は大破したと見られている。

周波数
 電波による送受信は、ISU(Iridium Subscriber Unit: イリジウム利用者端末)、衛星、GW(GateWay: 関門局)でそれぞれ行なわれる。
 各周波数は、次のとおり。

地上設備
 イリジウム端末以外の電話網とは関門局(GateWay)を通じて接続する。関門局は、交換局とET(Earth Terminal: アンテナ局)で構成されている。
 日本にも、かつては関門局があったが、廃止された。以前は、交換局として長野県南安曇郡豊科町(現・安曇野市)に長野関門局、ETとして豊科町(現・安曇野市)に安曇野局、長野県北安曇郡美麻村(現・大町市)に美麻局、長野市篠ノ井に篠ノ井局が設置されていた。
 その他、次のような重要設備がある。

ライバルとの差
 同じ低・中高度周回衛星方式の携帯電話に、ICOグローバルスターがある。
 これらとの最大の違いは、衛星間通信によってネットワークを構築していることである。
 関門局同士を地上回線で接続することでネットワークを構築するICOやグローバルスターの場合、必ず一旦関門局に通信信号を戻す必要があるため、衛星と関門局が繋がっていない場合には、その衛星のエリア内での通話が不可能になる。
 一方、イリジウムは衛星間での通信が可能なため、その衛星がどの関門局とも回線を繋ぐ事ができない状態であっても、他の衛星を経由して通信が可能である。

状況
 利用者数が伸び悩み、世界的に赤字続きで次々と会社が破産、事業が廃止され、2000(平成12)年3月にはサービスが終了した。
 衛星の破棄も検討されたが、新たに設立されたIridium Satelite LLCに資産が買収され、2001(平成13)年4月から新たにサービスが開始された。
 また日本でも、KDDIの子会社KDDIネットワーク&ソリューションズにより2005(平成17)年6月1日よりサービスを開始し、5年ぶりにイリジウム復活となった。KDDIネットワーク&ソリューションズは、後にKDDIに吸収されている。
 2008(平成20)年現在も無事にサービス中で端末の新機種も登場しているが、KDDI自身は積極的に宣伝している気配がない。

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