ARP
読み:アープ
外語:ARP: Address Resolution Protocol
MACアドレス
(Ethernetアドレス)と
IPアドレス
の関係などを管理する
プロトコル
。仕様は
RFC 826
(
STD 37
)に簡潔に書かれている。
目次
概要
機能
Ethernet
技術
パケット構造
アドレス解決の手順
基本動作
ARP要求の送信
ARP要求の返信
ARP応答の受信
ARPテーブルの更新
ARPの問題点等
関連プロトコル
概要
機能
このプロトコルは、ハードウェアアドレスとその上位で動作するプロトコルアドレスの関係を管理するものである。
OSI参照モデル
の
ネットワーク層
に属するプロトコルで、Ethernetの上に直接実装されている。
EtherType
(Ethernetフレームタイプ番号)は0x0806である。
実際には様々なハードウェアアドレスやプロトコルアドレスに対応する汎用性の高いプロトコルであり、様々な環境で利用できる。但し、最もよく使われているのが
Ethernet
での利用で、MACアドレスとIPアドレスの関係管理である。
以降は、このEthernetでの利用を前提として解説する。
Ethernet
Ethernetでは、通信相手をMACアドレスで識別する。そのため、通信したいノードのIPアドレスが分かっていても、そのノードのMACアドレスが分からなければ通信できない。
そこで、IPアドレスからEthernetのMACアドレスを求めるためのプロトコルとしてARPがある。なお、IPアドレスからMACアドレスを求めることを「
アドレス解決
」と言う。
技術
パケット構造
先頭より順番に、次の情報が格納される。
ハードウェアタイプ (ar$hrd) (2オクテット)
ARPHRD_ETHER (1) ‐ Ethernet
ARPHRD_IEEE802 (6) ‐ IEEE 802
ARPHRD_ARCNET (7)
ARPHRD_FRELAY (15) ‐ フレームリレー
ARPHRD_STRIP (23) ‐ Ricochet Starmode Radio
ARPHRD_IEEE1394 (24) ‐ IEEE 1394 (FireWire)
プロトコル (ar$pro) (2オクテット)
MACアドレス長 (ar$hln) (1オクテット)
IPアドレス長 (ar$pln) (1オクテット)
オペレーションコード (ar$op) (2オクテット)
ARPOP_REQUEST (1) ‐ ARP要求
ARPOP_REPLY (2) ‐ ARP応答
ARPOP_REVREQUEST (3) ‐
RARP
要求
ARPOP_REVREPLY (4) ‐ RARP応答
ARPOP_INVREQUEST (8) ‐ Inverse ARP(IARP)要求
ARPOP_INVREPLY (9) ‐ Inverse ARP(IARP)応答
送信元のMACアドレス (ar$sha)
送信元のIPアドレス (ar$spa)
宛先のMACアドレス (ar$tha)
宛先のIPアドレス (ar$tpa)
オペレーションコードにあるRARPとIARPは、実際にはARPとは異なるプロトコルである。ARPの拡張であるため、参考までに記載した。
アドレス解決の手順
基本動作
基本的には要求を投げ、その応答を待つ。
オペレーティングシステム
(OS)であれば、通常は下位層(
デバイスドライバー
など)が処理している。この処理が必要に応じてARPパケットを
ブロードキャスト
し、その際、当該の機器が(あれば)応答を返すので、それを待つことになる。
機器としてARPを実装する場合、自分宛への解決要求かを確認し、もしそうであったら、パケットの所定の欄に自分のMACアドレスを入れ、質問主に
ユニキャスト
で返信する。
ARPの仕様を記載したRFCは古いため現在主流の書式と違って分かりづらいが、基本はこれだけである。
ARP要求の送信
ネットワークの実装で、送信時に未知のMACアドレスが必要になった場合、ARPの要求をネットワークに送信する。このパケットは
ブロードキャスト
で送信されるため、同じセグメント内にある全てのノードが受信できる。
この際、次の内容を設定して送信する。
ハードウェアタイプ(ar$hrd) ‐ Ethernetの場合は値1が使われる
プロトコル(ar$pro) ‐ 解決を要求するプロトコルを表わす
EtherType
。
IPv4アドレス
なら0x0800
MACアドレス長(ar$hln) ‐ 通常は6
IPアドレス長(ar$pln) ‐ 通常は4
オペコード ‐ ARP要求はares_op$REQUEST(値は1)
送信元のMACアドレス(ar$sha) ‐ 自分のMACアドレス
送信元のIPアドレス(ar$spa) ‐ 自分のIPアドレス
宛先のMACアドレス(ar$tha) ‐ ゼロで埋めておく(未定のため)
宛先のIPアドレス(ar$tpa) ‐ アドレス解決を要求するIPアドレス
ARP要求の返信
ARP要求を受け取ったノードは、そのARP要求が自ノード宛かどうかを判断せねばならない。もし自ノード宛でなければ、そのARP要求パケットは、原則としてそのまま破棄する。
まず、ar$tpaが自分のIPアドレスと一致するかを確認し、一致すればARP応答を、その送信元に対して返信せねばならない。
このとき、次の手順が必要である。
送信元と宛先のアドレスを交換する(送受信の方向が変わるため)
返信する送信元のMACアドレス(ar$sha)欄には、IPアドレスに対応するMACアドレスを格納する
オペコード欄を、ares_op$REPLY(値は2)に書き換える
受信はブロードキャストだが、返信は
ユニキャスト
になる。
またこの応答の際には、要求元のIPアドレスとMACアドレスの対を
ARPテーブル
に登録(または更新)する。
ARP応答の受信
ARP応答を受信したノードは、送信元のMACアドレス(ar$sha)を参照し、IPアドレスに対応するMACアドレスをARPテーブルに格納する。
これによりアドレス解決が達成され、更に、互いのノード同士で互いのIPアドレスとMACアドレスを得ることが出来る。
ARPテーブルの更新
ARPテーブルへの登録または更新は、ARP要求のパケットを受信した場合と、ARP応答のパケットを受信した場合にのみ行なわれる。
それ以外でも、IPアドレスとMACアドレスを対応付けられる情報を得る機会はあるが、登録はしない。
より詳細は
ARPテーブル
の項を参照。
ARPの問題点等
ARPは、受け取ったパケットを、そっくりそのまま信じることを前提としたプロトコルである。
認証や暗号化は一切なく
改竄
は容易であり、もし改竄されればARPテーブルが不正に書き換わってしまう。つまり不正な経路を通過するように設定でき、通信の傍受などが可能となってしまう「
ARPスプーフィング
」と呼ばれる脆弱性がある。
本質的な解決法は現時点では見出されていない。
関連プロトコル
ARPと同様の
アドレス解決
プロトコルに、次のようなものがある。
AARP
(AppleTalkで使う)
RARP
(MACアドレスからIPアドレスを得るARPの逆プロトコル)
ネイバーディスカバリプロトコル
(ARPに似た、IPv6用のプロトコル)
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