閉殻構造 (電子殻)
読み:へいかくこうぞう
電子殻(原子の電子軌道)が電子で満たされている構造の原子。
概要
電子殻には、原子核に近いところから順に、K殻、L殻、M殻、N殻、O殻、P殻、Q殻、…とあるが、最外殻(その原子が持っている電子殻の一番外側)に含まれる電子の数が8(K殻のみ2)であるものをいう。
この構造の原子は、安定しており、反応性に乏しい。
特徴
希ガス
例えば、K殻(1s)が電子で満たされている原子番号2番のヘリウム、L殻(2s+2px,2py,2pz)まで電子が満たされている原子番号10番のネオンなどが該当し、これらは周期表の一番右側に位置する希ガス元素となる。
希ガスが安定し、反応性に乏しいのは、希ガスがこのような閉殻構造を持っているためである。
それ以外の原子は、閉殻構造になるには電子が多いか少ない。そこで、電子を放出してイオンとなることで安定する。
最外殻
各電子殻にはひとつ以上の副殻がある。周期表の原子番号を一つずつ進めていくことは、基本的には、周期表の各周期に対応する電子殻を電子で充填していくものとなる。
ただし、各電子殻の副殻のうち、エネルギーの高い副殻は、エネルギーの低い次の電子殻の副殻よりエネルギーが高くなる。例えばM殻の3d殻よりN殻の4s殻の方がエネルギーが低いため、電子はM殻ではなく、外のN殻に先に入る。このように、M殻以降は、電子殻がすべて電子で埋まる前に次の電子殻の副殻に電子が入る現象が見られる。
このうち、電子が存在する電子殻のうち最も外側のエネルギーが高い電子殻を最外殻といい、原子の化学的な性質は、この最外殻電子で決まることが多い。
s軌道とp軌道
電子軌道において最外殻のs軌道とp軌道が電子計8個で満たされたときを閉殻といい、これが閉殻構造となる。
この状態となるのは、原子の通常状態では希ガスのみである。
- 2He : 1s=2で閉殻
- 10Ne : 1s=2、2s=2、2p=6で閉殻
- 18Ar : 1s=2、2s=2、2p=6、3s=2、3p=6で閉殻
- 36Kr : 1s=2、2s=2、2p=6、3s=2、3p=6、3d=10、4s=2、4p=6で閉殻
- 54Xe : 1s=2、2s=2、2p=6、3s=2、3p=6、3d=10、4s=2、4p=6、4d=10、5s=2、5p=6で閉殻
- 86Rn : 1s=2、2s=2、2p=6、3s=2、3p=6、3d=10、4s=2、4p=6、4d=10、4f=14、5s=2、5p=6、5d=10、6s=2、6p=6で閉殻
- 118Uuo : 1s=2、2s=2、2p=6、3s=2、3p=6、3d=10、4s=2、4p=6、4d=10、4f=14、5s=2、5p=6、5d=10、5f=14、6s=2、6p=6、6d=10、7s=2、7p=6で閉殻
イオンになると、他の原子でも閉殻構造となる。
また、分子構造を取ると、例えば酸素分子(O2)は共有結合を作っており、それぞれの原子は閉殻構造となっている。
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