種族III
読み:しゅぞくさん
外語:Population III stars

 大きく二つある星の種族より更に古い恒星を表わす分類。現時点ではまだ存在が確認できておらず、仮説の段階である。「第一世代の恒星」ともいう。
目次

概要
 近年の研究により、かつてウォルター・バーデ(Walter Baade)が明らかにした恒星にある二つの種族の拡張として考案された用語。
 それゆえに明確な定義はないが、種族IIの星に先立ち、宇宙で最初に形成された恒星を種族IIIと呼ぶ。

特徴

元素
 現在のビッグバン理論では、水素ヘリウムは宇宙誕生の際に作られ、それよりも重い元素は恒星内での核融合反応などで作られたと考えられている。
 従って、ビッグバン直後に生まれた恒星は水素・ヘリウムと、その恒星の核融合によって生じた僅かなリチウムなどを含むだけで、それ以外の重元素を一切含まない恒星だと考えられる。こういった理論上の恒星を種族IIIと呼ぶ。

宇宙の再電離
 非常に古い時代の天体であるクエーサーにすら、スペクトル中にヘリウムより重い元素が見られる。これは、この時代に既に天体の材料として重い元素が存在していた事を意味する。
 つまり、ビッグバンの後、クエーサーが生まれるまでの間にも、銀河が大規模に恒星(種族III)を作る時期が存在していたことを示唆する。
 但し現在でも、まだそのような恒星は観測されていない。重力レンズを利用した観測で幾つか候補は見つかっているが、確証が得られていない。

種族IIIの天体
 種族IIIの天体の質量は、太陽の数百倍はある超巨星が多かったと考えられ、そのため寿命は短かったと考えられる。このため既に超新星爆発を起こして現存はしていないと考えられるため、観測のためには爆発する前の時代、つまり初期の宇宙を観測する術が必要になる。
 非常に金属量が少ない、ごく初期の種族IIの恒星と考えられるHE 0107-5240HE 1327-2326の発見により、宇宙の初期にも低質量星が作られていたことが分かった。こういった恒星の観測をすることで初期宇宙の謎にさらに迫ることができると考えられている。

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