自転車
読み:じてんしゃ
外語:bicycle

 ペダルを足でこぎ、移動する車。
目次

定義
 自転車は荷車や馬車と同様の軽車両の一つである。
 道路交通法(以下、道交法) 第2条で、以下のように定義される。
 ペダル又はハンドル・クランクを用い、かつ、人の力により運転する2輪以上の車であって、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のもの(人の力を補うため原動機を用いるものであって、総理府令で定める基準に該当するものを含む。)をいう。

使い方
 詳細は後述するが、基本は次のとおりである。
 次を守れない者は、自転車に乗ってはいけない。違法だからである。
 おまけ

法規制

車道通行の義務

車道、路側帯
 自転車は軽車両、つまり車として扱われるので、道交法第17条の規定により車道を通行しなければならない。
 また同法第17条の2により、軽車両は路側帯も通行可(路側帯は車道に含まれない)。
 車線が分かれていない場合は「軽車両にあつては道路の左側端に寄つて」(道交法第18条)通行しなければならない。当然、路側帯があれば路側帯を通ることになる。

歩道
 自転車は、原則として歩道を走ってはならない。道路標識等で許可されている場合や、法に指定されている特段の事情がある場合(小児や老人、身体障害者等)は歩道も走行できる。具体的には、次に該当する場合に自転車は歩道を走行できる。
 歩道走行の条件を満たさずに自転車で歩道を走行した場合、通行区分違反である。罰則は「3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金」である。
 また歩道を走行する場合にあっても、原則として中央から車道寄りを徐行せねばならず(道交法第63条の4 第2項)、歩行者の通行を妨げてはならず(道交法第17条の2 第2項)、歩行者の通行を妨げることとなるときは一時停止せねばならない(道交法第63条の4 第2項)。
 歩道はあくまで歩行者が優先であり、わが物顔でベルをリンリン鳴らしながら歩行者を押しのけて歩道を走るなど、もってのほかである。これは「歩行者通行妨害」(道交法第63条の4 第2項)という違法行為であり、罰則は「2万円以下の罰金又は科料」(道交法第121条 第5項)である。

左側通行の義務
 道交法第17条4項により自転車は左側通行である。
 時々逆走する自転車を見かけるが、違法行為であるのみならず、大変危険なのでしてはならない。
 かつて、一部の路側帯は「自転車の対面通行が可」であったため、逆走が可の路側帯と不可の路側帯が混在していたのは事実である。しかし2013(平成25)年の道交法改正により、自転車が通行できる路側帯は道路左側のみとなったため、道路および路側帯の逆走は一切不可となった。罰則は「3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金」である。

灯火の義務
 道交法第52条により夜間は「前照灯車幅灯尾灯その他の灯火」を点けなければならない。
 夜間、無灯火で走行することは違法であるのみならず、危険である。
 「自分は見えているから」などと強弁する者もいるが、この灯火は照明というよりは、自分が存在することを周囲に気付かせるためにある。

自転車ならではの義務
 原付と同様の二段階右折が必要である(道交法第34条 第3項)。ただし、原付は信号があるなど一定条件下であるのに対し、自転車は常に二段階右折しなければならない。
 加えて、軽車両は基本的に併走してはならない(道交法第19条)が、自転車に限っては標識で指定された場所では2台が併走できる(道交法第63条の5)。

酒気帯び運転等の禁止
 道交法第65条の規定により酒気帯び運転等は禁止である。

自転車の最高速度の制限
 自転車の最高速度の制限は、法的には未定義である。
 道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)第11条では
 法第22条第1項の政令で定める最高速度(以下この条、次条及び第27条の2において最高速度という。)のうち、自動車及び原動機付自転車が高速自動車国道の本線車道(第27条の3に規定する本線車道を除く。次条第3項において同じ。)以外の道路を通行する場合の最高速度は、自動車にあっては60キロメートル毎時、原動機付自転車にあっては30キロメートル毎時とする。
 と決められているが、軽車両については、特別な制限規定が無い。
 一般の道路の最高速度は60km/h(144km/hBeat)であること、高速道路は走れないことを考慮すると、自転車の法的理論上の最高速度は60km/h(144km/hBeat)と考えられる。
 もちろん最高速度の標識や表示があれば、それに従わねばならない。また自治体によっては、何らかの制限を科している可能性もある。

先行車両の追い越し
 さて、こうなると先行車両を追い抜くことも理論上は充分可能である。道交法第28条では追い越しは右側からと決められているので、自転車で原付や乗用車を追い越すときは、右側の車線からすること。
 また車線変更時には、右腕を伸ばしたり直角に曲げたりして後方の車両に合図をすることを怠りなくせねばならない(道交法第53条)。

施行細則での規制

罰則規定
 道路交通法で規制されていないその他については、各県の道路交通法施行細則で規制されていることがある。
 この規制には罰則規定がないことが多いが、施行細則による制限を補助することを目的に道路交通法が改正され、第六章の二に安全講習の受講義務が追加された。
 施行細則に限らず悪質な違反を繰り返す自転車運転者に安全講習を義務付けるもので、3年程度の間に2回以上違反で摘発された運転者を対象とする。各都道府県の公安委員会による受講命令に従わない場合は5万円以下の罰金が科される罰則が存在する。

傘さし運転の禁止
 雨の日に傘をさして運転する行為である。片手運転になることや、視界を妨げる可能性があることから危険とされている。
 各県の道路交通法施行細則などで禁止されており、また道交法でも自転車安全運転講習の対象となった。
 雨の日は、レインコートを着用するべきである。h
 また、自転車に傘を取り付けるための装置も市販されているので、この装置の利用も検討対象であろう。ただし、風の強い日は危険なので、そのような日に使うと自転車安全運転講習の対象になる可能性があるとされている。

携帯電話の使用
 携帯電話で、通話はもとよりメールしながら前方不注意で運転したりする行為である。
 道交法第71条 五の五では「自動車又は原動機付自転車」でのみ、運転中の携帯電話の操作を明確に禁止されていた。自転車では長く規定が無かったが実際に行なえば前方不注意であることは自明である。
 各県の道路交通法施行細則などで禁止されており、また道交法でも自転車安全運転講習の対象となった。

イヤホン・ヘッドホンの使用
 イヤホン・ヘッドホンで音楽を聴きながらの運転である。交通に関する音や声が聞こえない状態となり、重大な事故を起こす例がある。
 各県の道路交通法施行細則などで禁止されており、また道交法でも自転車安全運転講習の対象となった。

違反の考え方

道交法違反は重罪
 自転車でも当然だが道交法を厳守せねばならない。
 しかし自転車の場合、車やオートバイと違い反則金制度(いわゆる青切符こと「交通反則告知書」)がないために、オートバイなら2点減点・反則金6千円程度の軽微な違反であっても、自転車では正式裁判にかけられる(いわゆる赤切符こと「告知票」)ことになるので注意。
 自転車の運転手は検察の取り調べを受け、起訴(通常は略式起訴)されると裁判所に行かなくてはならなくなる。
 いきなり赤切符になるということもあり、警察も逮捕に及び腰となっていたために、自転車運転者の乱暴運転は放置され、それが当たり前のような状況になってしまった。そこで、自転車安全運転講習という制度が作られることになった。

主な違反行為
 次のようなものが考えられる。

自転車安全運転講習
 2015(平成27)年6月1日より、自転車により危険な運転を繰り返した場合、安全運転のための講習の受講が義務化された。これは子供であっても14歳以上は対象となる。
 自転車安全講習は3時間で、受講手数料は都道府県条例で別途定められるが、標準額は5,700円とかなりお高い。しかも、命令を受けて3ヶ月以内に受講しない場合は5万円以下の罰金が科せられる罰則規定が付けられている。
 具体的には、次を2回以上繰り返した場合に、受講命令が課せられる。
 機械的すぎて分かりにくいが、要するに次はぜんぶアウトということである。
 元々全て道路交通法違反などの犯罪行為ではあったが、自転車では軽視される傾向にあったものである。それを厳罰化する前に、まずは講習という形で教育・啓蒙していく方針となったようである。

無灯火・携帯の事故
 自転車で歩行者にぶつかり死に致らしめる事故も少なからず存在する。また生きていても重度の障害を負う者もいる。
 例えば、2002(平成14)年9月4日19:15(@468)頃、横浜市金沢区の路上で、無灯火・携帯電話使用中の自転車が歩行中の看護婦に背後から衝突し、首などに怪我を負わせた事件があった。看護婦は手足に痺れが残り歩行困難となり、看護師の職を失い2003(平成15)年から生活保護を受けることになった。
 携帯片手・無灯火・前方不注意では全く弁解の余地は無く、民事訴訟において、自転車を運転していた当時高校生の女性に対し、横浜地裁の井上薫裁判官は2005(平成17)年11月25日、約5,000万円の慰謝料の支払いを命じる判決を出している。
 たかが自転車となめていると、思わぬ事故を招く。自転車も、一つの車両であり、車なのである。

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